汐織視点

 清花さやかのことがずっと好きだった。清花とは家が近い、幼なじみだった。

 彼女のことを意識し始めたのは小学生の頃。それから高校生になるまでずっと片思いだった。

 片思いしている間、私は彼女を守りつづけた。彼女のことを狙う奴は、私が事前に、穏便に排除しておいた。その甲斐あって、清花は私と付き合うまで誰とも付き合うことはなかった。


 高校生になってから、清花は変わった。以前より暗くなり、自傷をすることが出てきた。私は彼女のことが心配で心配でたまらなかった。より注意深く彼女のことを観察するようになった。

 ある日、清花が急に明るくなったのを不審に思い問い詰めると、死ぬつもりだったことがわかった。

 そんなことはさせない。私の好きな清花に死んでほしくなかった。

 私は思い切って告白した。何年もの間、清花に対して思っていたことを全部伝えた。私の思いを聞いた彼女は、死ぬことをやめてくれた。

 彼女が私の思いに応えてくれたのは、あの時弱っていたから、何か縋るものが欲しかっただけなのではないか、と後から思い始めた。私は彼女のことが好きなのに、彼女が私のことを好きだという気持ちが信じられなかった。


 そんな不安を払拭するように、私は彼女に好きになってもらうためにいろいろなことをした。いつでも彼女の様子を観察して、彼女が望むことをなんでもしてあげたつもりだ。

 私なしでは生きられないようになって欲しかった。私は自分を慰めるために、彼女に依存させた。


 しばらく付き合ってから、私たちは肌を重ねた。快楽の中では、愛を信じられた。私はますます清花に夢中になった。私に依存させていたつもりが、私が依存していた。もはや彼女なしでは生きていけない身体にされていた。


 現在、私たちは同棲している。二人だけの空間となった家は、夜になると淫靡な気色を帯びてくる。夜な夜な私は清花を求め、清花は私に応えてくれた。


「私のこと、好き?」

 清花に見下されながらそう聞かれた。もちろん好きだ。好きで好きでたまらない。

「好き……大好き……あなたがいないと生きていけない……」

「私もよ」

「ねぇ……早くしてよ……」

 焦らさないで欲しい。私が望む快楽を与えて欲しい。その気持ちが、無意識に口から出てきた。

 私の言葉を聞いた清花は、私のスカートを外し、刺激を与え始めてくれた。

「どう? 気持ちいい?」

「あぁ……はぁっ…………」

 気持ちいいに決まってる。

「答えてくれないとやめちゃうよ」

「んっ……きっ、気持ちいい……です……」

「私のこと、好きでしょ?」

「はいっ……」

 もちろんだ。清花はこの世で一番好きだ。

「好きって言って?」

「好きっ……」

「もっと言って、お願い」

「好きっ、好きっ……大好きっ……好きっ……」

 何回でも言える。私は彼女に完全に依存していると、再認識した。

「ありがとう」

 清花はそう言うと、私の顔に近づいてきた。口を重ね、激しく舌を絡ませてくる。

「んんっ……んーっ……んっ……」

 息苦しさで、頭がボーっとした。焦点の合わない目で清花を眺めていると、いつの間にか私の服が脱がされていた。そして彼女が――




 清花が私の上に倒れこんできた。どけるような真似はしない。彼女の体温が直に伝わってきて、心地よかった。その状態のまま、ときどきキスをした。

 彼女が私から離れ、横に寝る形になった。ベッドがめちゃくちゃで、それが私のせいだと思って恥ずかしくなった。

 ふと横を見ると、すでに彼女は眠ってしまっていた。寝入っていて、動かない彼女の左手首にキスをした。彼女の傷も、すべてが愛おしい。

 眠ってしまった清花を抱きしめ、永遠に愛し続けると誓った。

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共依存 メンヘラ×ヤンデレ ありりん @Aririn9

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