第59話 魅惑の御宿・竹ふえ裸踊りはやめて(涙)編
夕食を食べ終えた後、旦那は再び部屋付き露天風呂へ直行した。勿論全裸で、である。尤も入ると言っても5分もしない内に帰ってくるので、湯船に浸かっているのは2~3分位のものだろう。それくらいならば身体に悪影響は出ないと思われるので、勝手にしろと放置する。
だがその放置がいけなかった。私が構ってくれないと見るや旦那は窓の外で行う『裸踊り』をバージョンアップし始めたのである。一回目よりも二回目、二回目よりも三回目と時間は長くなり、動きも無駄に複雑になってゆく。どうやら『裸踊り』の快感に完全に目覚めたらしい。
「いい加減やめて欲しい・・・一応股間を隠しているだけマシと思わなきゃいけないんだろうけどさ」
相手にするつもりはないが、嫌でも視界の中に入ってくる裸踊りに私は頭痛を覚えた。こんな小学生みたいな行動をする旦那だが、これでも理工学部の大学院を卒業している。
得てして知能指数と知性というのは比例しないことがままあるが、うちの旦那は特にそれがひどすぎる。唯一の救いは他人の前ではまともな行動を取るということだろうか。尤も、家族の前以外で裸踊りなんてしようものなら、間違いなく警察のお世話になるだろうが・・・。
「もういい加減やめたら?何度もお風呂に入ったら疲れるでしょう」
満足するまで窓の外で裸踊りをした後、にじり口から入ってきた旦那に私は忠告する。だが旦那は即座に首を横に振った。
「今夜はあともう2回入るから!それと明日の朝も入るからね」
まるで与えられた玩具で遊ぶように目をキラキラ輝かせながら旦那が宣言する。既に諦めかけていたとは言え、その一言は私を完膚無きまで叩きのめすには充分すぎた。
「・・・明日、寝込まないようにだけはしてよ。熊本城は絶対に見に行きたいんだから」
にじり口からするりと外へ出てゆく旦那の背中に声をかけるが、果たして旦那は聞いているのか・・・いや、たぶん全く聞いてはいないだろう。万が一風邪を引いたとしても熊本城見学ができる体力を残しておいてくれればいいやと私はガイドブックを広げた。
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