第47話 高千穂峡・多種多様な奇岩編

 九州は本州と比べて火山も多く、雨も多く降る。そして火山や雨の気まぐれは、時に平凡な岩石をとんでもなく美しい芸術作品に仕上げてしまう。天孫降臨の地・高千穂峡もその一つであり、遊歩道を歩いて行くと変化に飛んだ奇岩が現れた。しかも1つ2つなどではない。

『仙人の屏風岩』『鬼八の力岩』と特徴的な名前がついているものは勿論、その他にも多くの奇岩が峡谷を賑わせている。特に高千穂峡の壁面を形作る溶結凝灰岩の柱状節理はかなり立派なものだ。火砕流と五ヶ瀬川の侵食によって出来た天然の芸術作品に、遊歩道を歩きながらもついつい見惚れてしまう。

 ただ悲しいかな私も旦那も地学には疎いので、目の前にある奇岩がどれほど貴重なものか本当の意味で理解できていなかった。もしガイド付きのツアーがあるのならば絶対にそのツアーに参加するべきである。少なくとも中学生レベルの地学知識だけでは高千穂峡の奇岩を知ることは難しい。


「ここに元職場の同僚がいたらうざいくらいに解説してくれるのにな~」


 一応元・高校非常勤講師(理科)だったので地学を専攻する同僚の2,3人は知っている。きっと彼らなら間違いなく勝手に奇岩や地形の説明をしてくれるに違いない。というか止めても語り続けるだろう。

 因みに数年間&4校ほどで非常勤講師として勤めさせてもらったが本当の地学専攻の教員は2名ほどしか見たことがない。高校の時の教科担当を含めても3人だけだ。それくらい地学を学ぶ人間は極端に少ないし、もしいたとすれば98%の確率で変態に片足を突っ込んだ地学ヲタクである。

 だがガイドも地学ヲタクの同僚もこの場にはいない。なので私達は遠くに聞こえる鳥の声だけをBGMにしつつ、のんびり遊歩道を歩き高千穂峡の美しい光景を堪能した。その後、元いた場所まで戻りお土産屋さんを覗き込んだのだが、都内の満員電車並に人でごった返していた。

 この状況でお土産を物色するのもなかなか難しい。高千穂峡の人気を文字通り肌で感じつつ、2,3品のお土産を購入する。これからの予定を考えると、宮崎のお土産はここでしか購入できないのだが、混雑には敵わない。私達は早々に混雑した店から脱出すると、高千穂峡を後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る