第46話 高千穂峡・真名井の滝編

 保養所を後にした私達は、10時過ぎ頃に高千穂峡に到着した。この日は旅行中で初めての雨に祟られたが、高千穂峡に到着する頃にはかなり小降りになっており、内心ほっとする。


「これくらいの雨だったら傘はいらないよね。でも一応一本だけ傘持って行こうか?」


 万が一に備えて一本だけ傘を手にし、私達はまず駐車場近くにあった高千穂神社にお参りをした。派手派手しさはないが、天孫降臨の場にある神社だけに歴史の重厚感がひしひしと感じられる。そして厳かな気持ちのままお参りをした後、今度はメインである高千穂峡だ。

 道案内の看板にそって進んでいくと、私達が止めた駐車場より遥かに大きな駐車場があり、観光客が多くいた。高千穂峡にはこちらの駐車場のほうが断然近かったが、かなり混雑していた。これだったら高千穂神社近くの駐車場で正解だったと、夫婦で顔を見合わせて頷いてしまう。

 そして私達は混雑している駐車場を横切り、その近くにあった売店も『後で見よう』と一旦スルーすると、目の前に小さな橋が見えてきた。どうやらそこから高千穂峡が見渡せるらしい。逸る気持ちを抑えつつその橋に近づくと、とんでもなく荘厳な景色が目に飛び込んできたのである。


「うわぁ、真名井の滝だって!写真で見るのよりすごいね!」


 そこは高千穂峡でもよく紹介される『真名井の滝』だった。深い渓谷の向かって左側から落ちる滝は、猛々しさというよりは繊細な秀麗さを感じさせる。さすがに高千穂峡を代表する滝だ。

 更に眼下を見おろすと、貸しボート屋があるらしく数隻のボートが水面に浮かんでいた。小雨が降りしきる中、傘も差さずにボートを漕いでいるとはなかなか根性が要りそうである。しかし荘厳な真名井の滝をすぐ傍で見るには、ボートに乗って近づくしか無いのだ。

 ボートに乗って真名井の滝に近づく、という魅力も捨てがたかったが、私達がボート遊びをするには少々雨がきつすぎた。私達はボートでの見学は諦め、高千穂峡にそって整備されている遊歩道による見学をするため道を歩き始めた。

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