第22話 九州鉄道記念館編
たっぷりと壇ノ浦海域の古戦場を堪能した後、私達は門司でのもう一つの目的地・九州鉄道記念館へと向かった。元々九州鉄道の本社があった場所にあるこの博物館、大宮の鉄道博物館のような巨大なものではない。しかし明治時代からの九州の鉄道の歴史が詰まったなかなか良質な博物館であることは間違いない。
そんな九州鉄道史がぎゅっ、と詰まった博物館に脚を運びながら、『最新式』の電車が好みの旦那は博物館の歴史展示には目もくれず真っ先に運転シミュレーターへと向かった。ちなみにこのシミュレーターは100円で10分間も楽しめるという、関東では絶対に考えられない価格破壊を起こしているものである。こんな物が関東にあったら間違いなく混乱を引き起こすだろう。
年甲斐もなく小学生に混じり、シミュレーターの列に喜々として並びだした旦那を待っているのも馬鹿らしいので、私は一人館内の見学を始めた。
鉄オタではないがこの博物館には明治時代の貴重なブツが沢山展示されている。歴史オタにとっても好物だらけの博物館なのだ。
特に博物館の二階には常設・企画双方の展示品があり、当時の鉄道マンの制服や明治時代の写真の数々などの他、当時の駅弁のパッケージなども展示されていた。できることなら弁当の中身が判るような写真や再現した食品サンプルくらいは見たかったところだが、残念ながらそれは無い。それでも中身を想像させるような色とりどりのパッケージは目を楽しませてくれた。
更に驚きなのは明治時代からの弁当の種類の多さだ。今も昔も日本人の食に対する貪欲さは変わらないのか、残っているだけでもかなりの量である。現代以上に時間がかかった当時の鉄道旅、食事の需要も現代以上に多かったのだろう。そんな貴重な展示物の数々をのんびり見学しているうちに30分ほどが経過した。
「そろそろシミュレーター終わっているかな?」
運転手の制服や写真、弁当のパッケージを散々見尽くした私は、運転シミュレータ―がある場所へと引き返す。シミュレーターの前に並んでいた人数を考えれば旦那の順番もそろそろ終わっているはずだ。既に時間は4時近く、閉館時間まであと1時間と少しである。流石に旦那もシミュレーターだけで博物館見学を終わりにするつもりはないだろう。
だがその淡い期待はものの見事に裏切られた。旦那は『もう一度体験したいから』と再びシミュレーターに並び直していたのである。ふざけるなっ!と反射的に拳を握りしめてしまったが、萌を前にした鉄オタに言っても馬耳東風だ。結局何も見るものが無くなってしまっていた私は、近くのベンチで更に20分余計に待たされてしまうことになり、旦那もシミュレータ以外の見学はろくにできないまま九州鉄道記念館を後にすることになる。
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