第19話 ノーマルシーフードカレーVSふくカレー編

「やっぱりグツグツしている分、写真よりも美味しそうだよね~」


 旦那の一言に私も一も二もなく頷く。私の方のカレーはエビやムール貝、その他の具材が彩りよく並んだ華やかなものである。その一方旦那のカレーは河豚の唐揚げが4つ乗っかった、見た目は少々地味なものだ。だが問題は味である。私は早速グツグツ煮えたカレーに最初のスプーンを差し込む。するとカレーともトッピングのチーズとも違った、ぷちっ、と何か薄い膜のようなものが弾ける感触がスプーンに伝わってきた。


「え、何?何かぷちっ、っていったよ?何が入ってるの?」


 私は反射的に小さく叫んでしまう。その直後、黄色くとろりとしたもの―――チーズに隠れていた玉子の黄身が一気にカレーに広がったのである。

 よくよくメニューを読んでみれば、焼きカレーに玉子も入っていることが書かれていた。だがこの時の私はその情報をまるっ、と読み落としていたのである。なので『焼きカレーの玉子がトッピングされている』という知識を全く頭に入れていない状況でスプーンを差し込んだものだからちょっとしたパニックに陥いった。だがこれはあくまでも嬉しい誤算であり、大歓迎だ。

 私はとろりと崩れた卵の黄身をカレーに絡めながら一口食べる。するとスパイスの香りが口中に広がり、そのあとでチーズと玉子のまろやかさが追いかけてきた。カレーだけだと少々辛めだが、チーズと玉子のおかげで丁度良い塩梅になっている。

 一方旦那のふくカレーもなかなかの美味のようだ。淡白とはいえ河豚は河豚、しっかりと主張してくるらしい。ただ、私が頼んだ普通のシーフードカレーが思った以上に具だくさんだったのでちょっと羨ましかったとみえる。河豚を食べつつ時たま私の手元に視線が刺さる。


「こっちも美味しいけど、そっちも美味しそうだね」


 明らかに別の具材も食べてみたいといった口調だ。だけど私はあえてそれを無視してトッピングされていたムール貝やら海老などを平らげる。何故なら旦那は最後の河豚の一切れを口に入れた後にその一言を言ったからだ。自分だけ美味しい思いをするなんて冗談ではない。

 結局夫婦で互いのカレーをシェアすることもなくきっちり食べきり、店を後にした。その後再びバナナの叩き売り会場を横目に、門司でのもうひとつの目的地・九州鉄道博物館へ向かう。だが、目的地に行く途中で思わぬ出会いにより寄り道をすることになる。


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