第18話 念願のシーフード焼きカレー編

 ウエイトレスさんによって窓側の席に案内された私達は、席に着くと早速メニューを開いた。窓からは門司港のお祭りのため特別に来航していたイージス艦を特等席で見ることが出来たにも拘らず、それには一切目もくれず、にである。船舶ヲタには申し訳ないが、オタクは自分が興味を持っているジャンル以外はとことん無関心なのだ。

 『伽哩本舗 門司港レトロ店』はシーフードカレー推しらしく、メニューの一番目立つ場所に写真付きで掲載されていた。だったらここはシーフードカレーを食べるべきだろう。普段はお肉のカレーを食べる私だが、折角だからということで店イチ押しのシーフードカレーを注文する。

 しかしシーフードカレーを目的にしていた筈の旦那の視線は、メニューの全く別の場所を見ていた。その視線が追っているところを確認すると、そこには何と河豚の唐揚げが乗っかった『ふくカレー』なるメニューがあるではないか。しかもその価格1900円、一流レストランのカレー並みの価格である。


「すごいね。河豚をカレーの上に乗っけちゃうんだ……大胆というかチャレンジャーすぎるというか」


 そもそも河豚の唐揚げというものは、それ単品で恭しく出されるものではないのか?百歩譲っても淡白な味の河豚を刺激物代表のカレーのトッピングにして味が損なわれないのだろうか?河豚=高級食材というイメージがこびりついている中年関東人にとってあまりにも贅沢すぎるメニューである。

 だが、現実として河豚の唐揚げがトッピングされた『ふくカレー』がメニューとして掲載されており、ご丁寧に写真まで乗っていた。間違いなくこの店のメニューの一つなのだろう。そしてそのとんでもないメニューに旦那は強く心を動かされているようだ。案の定、暫くしてから旦那の口から飛び出したのはこの一言だった。


「折角門司まで来たんだし、二度と食べれないだろうから『ふくかれー』にしよう♪」


 個人的には普通のシーフードカレーでも良いと思うのだが、旦那には旦那のこだわりがあるらしい。結局旦那はふくカレーを注文することになり、店員さんに注文を告げる。確かに門司に来ることはなかなか出来ないし、記念に変わったものを食べるのも悪く無いと思う。が、本当に河豚をカレーにトッピングして味が消えないものなのだろうか?

 そんな疑念が消え去る前に注文したカレーがやってきた。オーブンから出したてのようにまだグツグツと煮えるその姿はあまりにも美味しそうで、私達のテンションは最高潮に達した。


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