第17話 九州上陸、小倉から門司港へ編
「ここどうかな?駅から近いしシーフードあるよ」
スマホ画面に表示された店、それは門司港駅から徒歩1分のところにあるという『伽哩本舗 門司港レトロ店』という店だった。画像のカレーがかなり美味しそうだったというのは勿論だが、駅からの距離が近いということも決め手の一つだ。何せ夫婦揃っての方向音痴、土地勘がない場所で迷子にならないのが何よりだ。
旦那もその店が駅から近いという事と、何よりかなり美味しそうなシーフードカレーがメニューに有るということでかなり乗り気である。
「じゃあここにしようか。それでなくても向こうに着くのは1時過ぎだし、駅から近いほうがいいもんね」
私は旦那が乗り気なことを良いことに半ば強引に話を進める。でないと優柔不断の旦那の事だ、門司の街をうろついた挙句一番空いている店に入りかねない。それだけは絶対に阻止し、美味しい焼きカレーの店に突入するのだ―――私はそう決意しつつ店の地図をブクマし、スマホの画面を閉じた。
そうこうしているうちに4時間に及ぶ苦行の新幹線旅がようやく終りを迎えた。私達は門司港駅へと向かう為に博多の手前にある小倉駅で下車し、宿泊セットが入っている大きな鞄を強引にコインロッカーに押し込める。
そして身軽になってから鹿児島本線に乗り換えた。実はこれが私にとっての九州初上陸だったのだが、空腹のためひたすら門司の焼きカレーを目指している私にそのような感動など一切ない。そんな空腹中年を乗せた鹿児島本線の列車はすぐさま小倉から3駅先の門司港に到着した。
どうやら何かお祭りの真っ最中らしい。電車の中からも沢山の出店が見えたのだが、駅前でも門司港名物バナナの叩き売りが行われていた。TVでは見たことがあるが本物を見るのは初めてだ。私は思わず足を止めて見ようとしたが、その瞬間旦那に襟首を引っ張られる。
「先にごはん!」
既に時間は一時過ぎ、流石にお腹が減っているらしい。だったら新幹線内でおやつでも食べていればいいのに、と思うのだがシーフードカレーの為に我慢していたようだ。北海道旅行以来すっかりご当地カレーにハマっている旦那に何を言っても無駄である。
私はバナナの叩き売りの見物を諦め、駅から徒歩1分のところにある目的のカレー屋『伽哩本舗 門司港レトロ店』に入った。カレー専門店というよりは昭和レトロな雰囲気が漂う可愛らしい喫茶店といった趣の店だ。だがこの可愛らしさの騙されてはいけない。後に知ることになるのだが、『伽哩本舗 門司港レトロ店』は横濱カレーミュージアム初代殿堂入りを果たした店なのだ。それだけにメニューに掲載されていたシーフードカレーの一つに、私達は度肝を抜かれる事になる。
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