今どきの若者は/まんまとゲーミフィケーションされる男

 今どきの若者は本当に文章がダメ。いやまあカクヨムにいる皆さんは別としてだが。でもこう言っちゃあなんだがカクヨムにいる皆さんはどう考えてもメインストリームじゃあないでしょ? いやいやそんなことないですよ、俺は「今どきの若者」を体現していますよって奴がいるとしたら教えてやるが、お前の理解は間違っている。


 とにかくメインストリームの今どきの若者の文章の終わり方は結構すごくて、読みも書きもかなりのところまで来ている。なんか全世界テストで世界15位くらいまで落ちたりしているでしょう。つうことを考えるとこれはある程度客観的事象である。


 先日俺はあるところで文章の書き方を説明する際に、文章をA-B-C-Dの4つのパーツに分けたらいいよということを述べた。なんならA-B-C-Dの構造だけでなく、中身も説明した。さすがに全部は言ってないが、概略は述べた。でここまで説明すると、少なくとも2~3年前までは、まあまあできたわけ。8割くらいは微修正で行けた。1割は大工事が必要で、残り1割はかなりのところ口述筆記に近い状態になっていたが("口述筆記"をしてしまうのは本当は良くないのだが)、それでもまあなんとかどうにかって感じだったが、まず「微修正でいける」比率が激減している。逆転まではいかないと思うが、下手したら50 %切っているかもしれない。で残りは大工事が必要なのだが、この「工事」というのが本当に厳しくて、口頭で説明してもだめ、筆記で概念を説明したらそのままそれを書いてくる。これはここに書くべき内容の概念であって、この文をこのまま書けって言ってるわけじゃあねえんだよ。そこから説明必要か? なあ。ってなわけで、わりと口述筆記に近づいてくる。


 挙句、今回はA-B-C-Dを別の日程で説明したのだが、B-C-A-Dみたいな順番で書いて平気な顔で出してくるやつがいて、えっこっから始めるの? Bから? まあダメとは言わないけど……でまあCが来るのはいいとして、なんでここでAに戻って正気でいられるんだ。せめてDに行けよ。Dに行って、Aを入れるところわかりませんでしたならまだ分かるが、お前この、自分で書いている文の意味分かって書いているのか? そもそもなぜお前は俺が文章を見ている時に遠くにいるんだ。こっちこい。

「あ、勝手に直してくれていいですよ」

「俺が直したいみたいに言わないでくれ。あとこれはちょっと手を加えるではダメなレベルだ。いいからこっちこい。置いて立ち去るな」

 そしたらしぶしぶよ。しょうがねえなあこのオッサンはみたいな感じでこっちに来てよ。

「でも雅島さんが書けって言ったことを書きましたが」

 と来る。

「俺の質問は、『お前は自分が書いた文章の意味を理解しているか』だ」

「いや分かってませんけど」

「だろ。そんなもの持ってくんなよ。まず分かるようになってから来いよ」

「でも、別に普段から分かってないで書いてますけど」

「普段からってのは」

「だから……とか、――とかの時も、分かってないで書いているけど、別に通ってますし、ま、直せって言うなら直しますけど、どうせそのあと見るんだから直してもらった方が早くないですか?」

 

 これはだからもう教育の敗北やなって思ったよね。……とか――を通過させてきたツケがここに回ってきている。もうだめだ。


「じゃあ分かった、お前の書いた文のこっからここまではひとまとまりだ。こっからここまでも。あとこっからここまで……は多少分割してるのと足りない部分があるが、まあとりあえずこれはこれで1パーツ。で、ここも1パーツ。な。つまり全部で4つの部分がある。この4つの部分を並び替える組み合わせは4×3×2×1で24通りある。24通り全部作って、自分で見直して、一番なんかしっくりくんなってやつを持ってこい。意味わかんなくてもそれならできないか」

「嫌ですけど」


 嫌ですけど!!??? 今俺は結構譲歩したつもりだぞ。


 でまあそのあともあれこれやって、まあなんとかかんとか形にして。なんとかかんとか形にしない方がいいのかもしれないが、しかし、そこまでの責任を負うつもりはなく、ただなーこれを野に放ってそれが正解なのかなー、とは言ってもじゃあどうしろって言うんだよなー、まったくよぉ、みたいなくさくさした気持ちでいた。


 で、こう思っていた。能力が低下していると。全般的な力が下がっているのではないかと。

 

 賢い皆さんならご存じのことだと思うが、全然そんなことなかった。


 昨日、その書いた文章の内容をプレゼンテーションするという機会があった。で、何せ文章を書かせないといけないので、プレゼンテーションまであまり手が回らず、これもまたがっちりやらなあかんのかな、しんど、と思いながら見た。したらめちゃくちゃうめえでやんの。これ、逆に2~3年前と逆転していて、基礎レベルがすげえ高い。最初にちゃんとアイスブレイクとか入れて、強調したいところとか見せたいところの取捨選択もちゃんとできているし、絵だけ見せて言葉で解説したり、文章があるところも結構自分の言葉で話してて、かつなんかちょっと会場も弄る。すげー面白くないところで、スライドの移動アニメーションの派手なやつを使って、「次のスライドは面白くないので、派手なエフェクトで切り替えまーす」みたいなことを真顔で言うボケも挟む。え、なにこれ、すごくね? 普通に参考になるところまであるが?


 だからその、例えば俺はそろばん、一応算数か数学かで習っていた世代だが、まあ正直言って面倒くさくて、そろばんやっているフリして暗算していた。あとまあ習字は学校でも習い事としてもやっていたが、何が楽しいのかもわかんねえし完成形の良し悪しも今一つわからないし、墨はこぼすしで最悪の体験という記憶の方が強い。草書とか行書なんて、なんでわざわざそんなもんで書くんだと思うし、読み取れるようになる気がしない。


 それと同じことなんじゃあねえかなと思った。


 YouTuberとかVTuberとかの皆さんは、絵を見せて、世の中の面白くもない事象を面白いように切り取って、そんで喋ってリアクションをして楽しい時間を作っている。Twitterなんて140字しか喋れないし、LINEは字数制限はないけどLINEで長文書くことなんてまあないだろうし(入りきらない)、スタンプなんかで意思疎通ができればそれで良い。って時に、わざわざ長たらしい文章を書いたり読んだりしないといけない理由なんて一つもない。いや小説とか好きなら読むかもしれないが、それはだから「書」が好きで、展示会に行くのと一緒で、それが好きな人が勝手に学んでやる分には良いが、なんでそったらことを強制されないといけないんですか。別に意思伝達だったらできますけど? あなたよりはるかに上手に、もっと楽しいやり方で。


 と言われたわけではないが、言われたような気がして唸っちゃったよね。


 なるほどなあ。だから読み書きってのは古来そもそも存在せず、存在してからもわりと特殊技能であったわけだ。そんで、人類のまあまあ長い歴史の中の極短い期間だけ一般技能になったが、今後また特殊技能になっていく。それでいいのかもしれない。つかそういうことなのかもしれない。

 そんで文章にこれまで割かれていたリソース・能力みたいなものはまた別のところで開花していって、"自分が思ったことを人に伝える力"全体は落ちているどころか、総和で言うと上昇しているのかもしれない。


 にゃるほどねー。


 俺はなんかちょっと感動して、でもなんか少しだけ寂しいような気もしながら、夕食について考えていた。で、先日「サラダチキンを久しぶりに食べてなんか幻滅してしまった話」 (https://kakuyomu.jp/works/1177354054881038781/episodes/1177354054892795066 )という話を書いたが、その時のコメントで「サラダチキンはほぐしてサラダに入れるんですよ」と言われたことを思い出した。


 そうだ。俺はサラダチキンは糖質制限時でも食えるポータブル食い物だと思っていて、ポータビリティが低いことで勝手に幻滅していたが、名前を見てみろ。「サラダ」チキンだぞ。良くお前その口で若者の読解力低下しているとか言えたな。6文字を読めてないお前が。


 で、まあ10品目のサラダみたいなの買って、サラダチキンも買って、刻んで載せてみたわけ。うめえの。食いでも増すし。

 やっぱ肉があるといいけど、なんかサラダ用の調理って面倒だしさあ、いろいろ鍋とか使う必要あるし、肉自体ってあんま味乗らないから、ドレッシング濃いのにしないとただゆでて乗っけるみたいだとそこまでうまくはない、って時にサラダチキン載せたらもう完璧よ。そういうことかー。


 だから、俺からしてみたら、「糖質制限時でも食える」「外で食う飯」という側面しか見えてなくて、食い物の価値をそこにしか見出してなかったから、サラダチキンというのは能力の低い食い物、日本は終わっている、糖質制限とか言ってるやつはバカ、みたいに思っていたが、実際のところ、「サラダを食う時に載せるチキン」という側面から見るとすさまじく能力が高いわけ。だから「サラダチキン」って言うんだって。書いてるだろって。そうだけど、なんていうか、やっぱ、意識したりきっかけがないとそれには気づけないんだなって。


 文章力は終わっているけど、プレゼン力は高い人たちを見て、俺はそういうことに気づくことができた。良かったなと思った。定期的にサラダにサラダチキン載せて食おうと思った。そしたら痩せるに違いないと。ところが。


 ――――――――ん。―――で―


 どこからか声が聞こえたような気がした。


 そう――あ――せん。逆――で―


 なんだ? 確かに声が聞こえる。この声はなんだ?

 聞こえる声のようなものに意識を集中しようとした瞬間、ずぐん、と何かが突き刺さるような感覚があって、音が鮮明に聞こえるようになった。


「そうではありません。逆なのです」

「逆? 逆って、何が逆なんだ?」

 声はあまりにも鮮明だったので、誰もいない部屋で声がするわけない、とか、そういう常識的なことをすっ飛ばして俺はつい尋ねてしまう。声は答える。

「因果が」

「因果が?」

 ことここに至ってようやく俺は事態の異常さを認識する。俺は叫ぶように言う。

「っていうか、あんたは一体なんなんだ!」

「私は美味しんぼ時空の精」

「美味しんぼ時空の精、だって!?」


 なんだその精は。いぶかしむ俺に、"美味しんぼ時空の精"とやらは語り掛ける。


「あなたは本当は、先にサラダチキンをサラダに載せて食べるべきだった。それが原因で、人間についての知見の変化はその結果であるべきだったのです。それが"美味しんぼ時空"に至る唯一のルートだった。

「しかしあなたは間違えた。あなたは人間についての知見の変化を原因として、食に関する知見を変化させてしまった。"美味しんぼ時空"にもそういう事例がないとは言いません。しかし、やはりこの時空への道をたどるものは、【正道】を歩まねばならないのです。

「人間関係におけるトラブルを食に還元し、食を通してそのトラブルの解決策を見つける。これが、これこそが【正道】です。あなたは既にヒントを得ていた。サラダチキンはサラダに載せるもの、そのようなアドバイスをもらっていたはずです。どうしてすぐにそうしなかったのです? もしあなたがサラダチキンをサラダに載せて食べ、ある側面から見た能力の低さは、別の側面からみると決してそうではないということに気づき、それを以て若者の能力を探ろうと思い立ったならば、あなたは"美味しんぼ時空"に到達することができた。それが唯一、絶対のルートだったのです。

「しかし道は閉ざされました。永遠にこの道が開くことはありません。私は美味しんぼ時空の精。あなたにそのことを伝えに来ました。さようなら」


 声はそう言って、途切れた。

 それから二度と美味しんぼ時空の精の声を聴くことはなかった。


2019年12月21日 08時32分の測定結果

体重:96.80kg

体脂肪率:30.60%

筋肉量:63.75kg

体内年齢:45歳






であと、今週マジでポケGO東京プレイの余波でヘトヘトのヘトで、飯は外で食うわ酒は飲むわ体重計には乗らないわの終わっている生活でなんとか乗り切って、今日は朝目が覚めたのはいいけど体が動かなくて「なぎスケ!」見たりとか、うとうとしたりとか、ポケモンソードやったりとかしてて、行動範囲はほぼ布団の上みたいな堕落した一日を送っていたのだが、16時くらいに「あっ今フカマルにエサをやらないと3回エサをやれないな」って思ってエサをやって、そんでじゃあまあ6 kmは歩きますか、とかせっかくだからルギアでも倒しますか、とかやってたらまあまあ歩いたし、なんか仕事する気にもなってPCは立ち上げることができた。まんまとゲーミフィケーションされてんな。ただ、PC立ち上げたあと何していたかというと、この記事を書いてて、もう5300文字あるらしいので、もういいや寝よ。仕事は平日にやるもの。そうですね。おやすみなさい。

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