日雇い日記:労働と思索(3)
今度はほんとに明日とかって書いて何日経ったと思っているんだ。
お前の明日はいつだ!
姉ちゃん! 明日っなかったことにしよう。それがお互いのためだ。そうだろ?
それで今日はびっくりどっきりデブ食が特になくて、まあソイは食べたのであるが、所詮ヤツは魚、四天王の中でも最弱であるので特に言うまでもない。むしろ今日ちょっとびっくりしたのは、ZAVAS。
俺はZAVASというものに強い憧れがあって、ZAVASを飲んでいる人間を盲目的に信仰するという癖すらあるのだが、なぜに斯様に憧れ倒しているにも関わらず自分で買わないのかというと、そりゃあZAVASだけ飲んだって駄目だろうとそのくらいの思考力はあるからである。
ダンゴムシだかワラジムシだか忘れたが、やつらは最初の角、ってか突き当たりで右に曲がると次は左に曲がる習性というか生態があるらしくて、俺はそれを聞いたとき果てしない空虚の中に落ち込んでいくような気がした。というのは、俺と虫を区別するものがもしもあるとしたならば、それは知性、というものだと思っていて、まあそこらの人を百人捕まえてきたときに知性グランプリ、だった場合俺は参加を辞退したい程度の知性しか持っていないが、そこらの虫を百匹とらまえて来ての知性グランプリであれば、これはまあ控えめにいってもベスト3くらいには余裕で入る、って思ってたのが、こいつら一回前に右に曲がったことにを記憶できているのか、ということはさっきどっちの角を曲がったのかすら思い出せない俺は、こいつらにさえ……と思ったからである。
とにかくその程度の知性の俺でもわかることがあって、それは何かというとZAVASだけ飲んだって意味ねーよということで、ところがドラッグストアなんかに売ってるZAVASってでかくないですか。あの量を飲み切るとしたら俺はそれだけの運動をしなくてはならなくて、いやしろよって皆さん声と手を揃えてビシィって虚空に裏拳を叩きこんだことと思うが(夜なのでお静かにお願いしますよ)、まあそう、しろよって俺も思うけどやっぱちょっと自発的にはね。しんどいよね。ってなわけでZAVASには淡い恋心、図書委員の眼鏡でおさげのあの子がサッカー部のエリートイケメンに抱いているくらいの淡さのやつ、それだけを胸に抱いて、そんででも買わない、という鬱屈とした人生を送ってきたわけである。
ハウエヴァ。思わず英語が出てしまうくらいハウエヴァってたのは、今コンビニに、ZAVASのなんか……なんていうのあの容器……なんか直方体に蓋つけたみたいな、まあ気になるようだったら今からローソンにダッシュしてみてきてほしいところであるが、とにかくその、430ml入りのZAVASドリンクが売っているではないかッ! これには俺は欣喜雀躍し、コンビニエンスストア内で五体投地ののちそれを購入、そいで気合入れてジムでちょっと筋肉をアレしてきたりした。で、まあちょっと鍛えたり、あと謎マシンで歩いたり、風呂入ったりして、そいでよぉっし飲むぞZAVAS! つって満を持して飲んだ。衝撃が走った。
さっきローソンまで全力ダッシュした皆さんには本当に心から謝罪するが、ちょっとこれ見て。これの、向かって左のでっかいやつを買って俺は飲んだんだ。
http://www.meiji.co.jp/dairies/milk_drink/savas-milk/
もう一つ言うと、https://kakuyomu.jp/works/1177354054884058319/comments これの今のところ一番上のコメントとその返答も見てほしい。
それで味の予想をしてくれ。ZAVAS MILK PROTEINの味。このパッケージの、まさに「乳白色」さを思い浮かべて、MILK PROTEINという名前を舌の上で転がすようにして。あとパッケージに「乳飲料」って書いてある。
これね。味。
ポカリなの。
マジで噴き出すかと思った。ほんとにびっくりした。
という感じになりながら失礼します。
それでえーっと日雇いのアドバイスをするって約束していて、まあしたから書くけど、これ参考になる人が果たしているんだろうか、僕はそんなことを考えながらあのミルクプロテインのポカリ感を思い出して、それから宇宙が今も広がっている、そんなことに思いを馳せた。
アドバイスその1.体力に自信がなくても大丈夫だ
これアドバイスか? って感じだけど、でも多分やる人(いれば)はここが一番不安だと思うので言っておくと、完全に無理というところはない。複数人で行く現場で、全員トーシロってシーンはほぼないし、たまぁに一人現場もあって怒られることはそりゃあある、でもぶっ倒れたりするほどの辛さはない。疲れるは疲れるけど。マラソン大会では最下位を争い、MRIでは運動野がおかしいと言われ、スポーツ全般ダメなデブもそれなりには働けているので、多分ちょっと太ってますよ、でもスポーツ経験はありますみたいな人はぜんぜんいけると思う。
過去いっちばん辛かったのは家具屋の運送の助手で、重いとかはそこまでないんだけど(せいぜいソファを階段であげるくらい)、今運送って大変なんだなって感じで、ドライバーがまー機嫌悪くて、すごいキレてくる。俺にキレたってしゃーねーでしょうよって感じだけど、それこそソファを階段であげるときに、「ちゃんとあげてこいオラ」みたいなこと言って上からソファを押してきたので、これは危ないなーと思って、少々大きい声を出した、というのがマックスのヤバイやつで、他の仕事は基本、肉体的な危険はないと思う。怒られはしばしば発生するので、図太く行くのが大事だと思う。俺は精神もデブだし、何しろ別に最悪切られても食い詰めるわけではないので結構いける。
アドバイスその2.それでも不安だったら最初は最終日に入れてもらおう
こういうところにくる大体の仕事というのは数日~1週間(長いと一年とかあるけど)のものであるが、あんまこういうこと言いたかないが、こういう仕事をやる人って「工数」って概念がない。その日の時間いっぱいまでやる。あるいは、その日やるべって決めた範囲までやる。まあこれは理はあって、基本的にみんな時給なので、長く働けるなら働いたほうがいいし、俺のようにバイトで入ってない人はその現場が終わるまでそこにいる、ってことは今日頑張れば明日の自分が楽になる。それから、雨とか雪とかその他諸々の事情で作業が出来ない日があったときに、工期を延ばすとなるとすごいクレームが入るのも容易に予想ができるので、まあ最後の分は多少余裕を持たせておこうとなるのは分かる。
となるとどうなるかっていうと、最終日は結構早上がりが多い。早上がりじゃあなくても、最後の1時間は養生(ブルーシートとかそういうので、床とかを覆うこと)を剥がすだけみたいな楽な状態になっていることが多いので、まあこっから慣れていくというのはアリだと思う。
ただ、雨とか雪とかでヤバイことになっている最終日に行くとエンドレスが発生するので、この辺はまず番割(仕事の割り振りをする人)にぼそぼそっと事情を話して、良いところを見定めて紹介してもらうのが良いと思う。
過去に一番ヤバかったのは、冷凍ケースの出し入れなんだけど、これ普通一晩でせいぜい2台~4台とか。大体スーパーの閉店時間ちょいすぎから始まって、翌2時とか3時に終わるという感じ、たまにスーパーラッキーモードで、冷凍ケース一個ずつズラして終わりみたいなパターンがあるので、その日も冷凍ケースの出し入れ、しかも最終日ってことでおーこれはいいんじゃんか、程良くてって思っていったら、明日リニューアルオープンだから今日中に70台入れて50台出すぞみたいな話になってて、いやーこれはね、長かったね。時間が。まあそんなこともあるので、これはなんというか目安程度の話ではある。
あと「工数」という概念がない繋がりでいうと、たとえば今日の作業はフロア1とフロア2の壁を削りましょう、みたいな状況があったとして、䂨りの人が二手に分かれて作業をすると。ほいで、まず俺はフロア2の削った壁をゴンゴン集めて捨てて行きます、みたいなことをする。で、そうやってくと、やっぱ削るほうが捨てるよりかは時間かかるので、一回ある程度捨てたところでフロア2の削り量はまださしてない、ように見える。なもんで、気を利かせてフロア1の方に行って、そこの削られた壁を集めて捨てて、そいでフロア2の方に戻る。そしたら、「おめーどこでサボってたのよ!」みたいなことを言われる。いやサボってなくて、フロア1の方を捨ててて、みたいなことを言うと、「誰がそれやれつったぁ?」とか凄んでくるので、いや自発的にですね、みたいなことをもごもご言いながらフロア2に張り付くしかなくなる、けどそうすっと、「無」の時間が発生する。一定程度捨て終わって、次の一定量が発生するまでの間ね。しかも、たまに「どこからどこまで削るか」みたいな話し合いとかもしているし。その間に1の方捨ててきたいんだけどなー。あるいは、1の方やってこいって言ってくれれば、トータルでは早くあがれるんだけどなー。とか思うけどそれはままならないこともある。現場改革とかできるカリスマがある人だったらいいかもしんないけど、俺はそういうカリスマまではないので、暇だなーの時間はしばしば発生すると思っといたほうがいい。
アドバイスその3.言葉をいくつか覚えていこう
これはまあその場で覚えりゃあいいことではあるのだが、基本、こういうところで懇切丁寧な教育というものはない。一応初期研修受けましたよみたいな書類にサラサラーっと書くことはあるが、実質的にはない。あるところもあるかもしれないが、俺にはなかった。
特に運送のレイアウトのときなんか、レイアウト先の配置の紙を一人か二人しか持ってないなんてことはザラで、全員に配れよなーその紙、効率わっる、って思うこともしばしばあるが、まあそんなもんである。バカが持って帰っちゃって機密がどうしたこうした、みたいなこともあるんだろうしね。
でまあ、レイアウトくらいだったら全員知らないわけだからまあいいけども、その場の全員にとって常識であることがぜんっぜん分からない初期状態ってのはちょっと辛い。俺もちょいと辛かったので、北海道方言ではないことを祈りながら、いくつか言葉を紹介しておこう。
うすべに/あおべに:なんか風流だなー。薄紅? 青紅? って感じだけど、これは「薄いベニヤ板」「青いベニヤ板」の略で、今度なんかビルの引越しとか見かけたら、床の方を見て欲しい。ブルーシートっていう青いビニールみたいなやつの上に、青い板みたいなのが引いてあるが、それのことである。つまりベニヤ板にブルーシート巻いて留めてあるってだけなのだが、一見すると「ベニヤ」に見えないので、「うすべに持って来い!」「うすべに? ってなんですか?」「ベニヤだべや!」「あっハイ!」ってベニヤっぽいもの持ってったら、「これはコンパネだアホ!」って言われることがある。
コンパネ:コントロールパネルかな、って思うけど違って、コンクリートパネルの略らしくて、ってことはコンクリートかなって思うと違って木。なんなの。初見殺しもいいとこ。
コンクリートの建物を作るときに使うパネル、って意味らしくて、じゃあ分かるわけねーだろ!! 技術工作でやってねーもの!! ようするに厚手のベニヤ板である。
「はい……あの人がトイレに入ってきたとき、私は用具入れの整理をしていて……何か争うような音は聞こえてたんですが、まさか殺人事件があっただなんて……。ええ、ですから顔は見ていません。でもそう、その時ちょうど犯人さん、あはは、さんをつけるのはおかしいですね。犯人に電話がかかってきたみたいなんです。内容は……すみません、ちょっと私も気が動転していたので良くは……でも、ううん、なんかパソコンの話をしていたような気がするんですよねえ」
犯行時刻に現場にいた人間のうち、その時間に着信を受けていたのは次の二人!
一人はIT企業に勤めている機械田メカ男。
もう一人は土建業者の斫田力男である!
「パソコンの話……これは犯人は機械田で決まりでしょう」
「ちょっと待ちなさい。いい? 機械田さん。その時していた話を、正確に再現してみて?」
「は、はあ……ええとその時の電話は、確かシェルスクリプトの調子が悪いという話で……それで、まずチャイルドプロセスをすべて消去してから、ペアレントプロセスを修正して、みたいなそういう話をしていた気がします」
「ほら、プログラム。ね? あなた。こういう話だったんじゃあないですか?」
「ええ……ちょっとうろ覚えですが、何かそういう横文字があったような……」
「いいから落ち着きなさい。あのね、機械田さん。内容じゃあないの。あなたはなんて言ってたの? よぉっく思い出して」
「え、ええっと、その……その、ですね。まず子を全部殺して、それから親も一回殺せ、と……」
「んなッ! お前! この猟奇犯罪者め!」
「う、うう……だから言いたくなかったんですよぉ……」
「だから待ちなさいって。いい? 目撃者のあなた。もしこの話が聞こえていたとして、あなた、これパソコンの話だって思う?」
「え、あの、ええと……いや、思わないです……」
「でしょう? じゃあこれだったらどうかしら、斫田さん。今度の現場、持ってく資材は何がいいかしら? 養生にどれだけ資材がいる?」
「んッ……あー、その、ブルーを2枚と……青ベニが20……」
「ふむふむ、他には?」
「……壁養生に青キャップ……くらいかな」
「ほんとに?」
「…………ち、違う! 俺じゃあないんだ!」
「違うというなら、その時の電話でなんて言ってたか、ちゃぁんと説明して欲しいわね。誰と電話をしてたかは分かってるんだから、聞きに行ったっていいのよ? でもそれだと手間じゃあない。ここで言ってもらった方がスッキリすると思うけど?」
「……コンクリートパネルを10枚……」
「ほんとにそう言った?」
「……コンパネを10枚って言ったよ! だがなぁ! お、俺じゃあないんだ、本当なんだッ!」
「ま、言い訳は署で聞くわ。コンパネ。コントロールパネル、の略で使われる言葉よね。あなた、これを聞いて勘違いしたんじゃあないかしら? 何かパソコンの話をしている、って」
「そ……そんな気がします……!」
で正解はこの"目撃者"が犯人なんですけどね。先に殺人をしていて、ほいでトイレに誰かが入ってきたので焦って用具入れに隠れて、そこに斫田さんが入ってきて慌てたわけだけど、慌てついでに着信を取って普通に話をしてしまった。これは普通ではない行動なので、それを突けばこいつに罪を着せられる……! と考えてたみたいな。そんな。そんな話になるくらいややこしいだろうが!
ツッコミが長い。だから1万字とかになるし、公開も遅れるんだろうが。はい。すいません。今日もう6100文字らしいんで、このへんにしとくね。まだ説明したい用語はあるので、明……近いうちに! また!
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