第6話 A、B、そしてX

 梅雨の晴れ間に、いつものように自転車で田んぼを突っきります。空の映った湖はどこへやら、稲の葉が茂り、すっかり緑に染まりました。町へ続くこの道は本当に真っ直ぐです。なんでも飛行機の滑走路くらいあるんだとか。


 ここを通る度に思うことがあります。

「自分が今まで来た道はこんなに真っ直ぐじゃなかったな。いや、これからもそうだ」


 将来の道はその人の仕事の延長線にある、と誰もが予想しますね。いえ、実際その方が良いです。ところが自分の場合、仕事の先にある王道Aでもなく、近しい道BやCでもない。

 誰もが驚くX、もの書きへの道です。


 最近になって、こっそり目指していたのを、公言しました。書く時間はそれほど変わりません。書きもので稼げるまで、仕事は続きます。これはXならではの険しさです。


 しかし、嬉しい変化があります。1番は先生の存在です。ダメが出ると落ち込みますが、課題がはっきりしてきました。書いている途中の段階で読んでいただけるなんて、今までないことでした。

 また、ありがたいことに応援してくれる人が増えました。堂々と書けるのです。


 ただし、どんなに強い味方がいても、道のりXを歩いていくのは自分自身です。

 決して楽じゃない。でも、もはやAにもBにも戻れない。どんなに大変でも、立ち止まるわけにはいかない。

 誰がなんと言おうと、Xを歩く。


 家に着き、夕立が降って止んでも、まだ暮れません。そうです、今日は明るい夏至でした。

 勝負はこれから。

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