第7話 遠夢
ここはどこだろう、暗い部屋だ。足が鎖につながれている…牢獄?仮にそうだとして、なぜここにいるんだ?犯罪を止めはしても犯した記憶はない。…理不尽だ!何が起きている、というか、俺はさっきまで何をしていた…ここで生活していた痕跡はあっても、記憶がない。もう一度部屋を見回す。牢と呼ぶには少々広い。テーブルには歯形とカビがついたパン、部屋のすみに風呂らしき水溜まり、トイレがその横にあるということは、ここは日本ではないようだ…。壁は重苦しい黒。格子の奥には、俺と似た格好の男。というか、俺たちが着ているこの服…センスがない。白と水色の縞模様?意味不明だ。
「囚人番号1543番!女王様がお呼びだ、ここを出る支度をしろ!」
あ、やっぱりここは牢獄的なアレですか。って、俺のところの扉開けていいのかよ!「何をしている!早く立て!」
あ、1543って俺か…出られるんだな、まぁ、俺無罪だしな…。さて、女王様とやらに、目一杯ケチつけてやろーか。
「女王様が、一度話がしたいとおっしゃっている。なんでも、かなり珍しい能力をもっているそうじゃないか」
なんだそれ。そんな話がマジなら今頃もっと幸せだっての。
「え、それ人ちが…」
いや待てよ。その能力があることを装わないと、脱出できないんじゃないか?それはまずい、ここはごまかそう。
「いやー、なんでばれたんでしょうかねー。隠してたつもりだったんスけどねー」
「…私にもちょっと見せてくれないか?」
そうきたか。まぁ、まだごまかせる。
「あまり人前でやるものじゃないんで、それはできないんス。すんません!」
「そうか、それは失礼した」
階段を上がり、明るいところに出た。
「この先が女王様の部屋だ。くれぐれも、無礼のないようにな」
さぁいこう。無罪の主張だ。でかい扉を勢いよくあけてみた。中には、見たことのる顔が…誰だっけ…。
「私が、このプーキー王国の女王、フィルオです」
凛々しい声に少し固まってしまう。言葉を探してみたが、適切な表現が出てこない…。
「えっと、なんでし…たっけ」
「あなたの能力は、実に興味深いものです。ですから実際にそれを見せていただいて、場合によってはそれを我が国のために使っていただきたいと思います」
期待の眼差しを向けられるが、どうしたものか。全く心当たりがない。なにか、ごまかす方法を考え…って待てよ。「記憶がない」と言ったら嘘にはならないんじゃないか?しかも俺の状況がわかるかもしれない…名案すぎる。
「実は、記憶をなくしてしまっていまして…その、どういったものか教えていただきたいと思うのですが…」
「ええっ!?それは…本当ですか?えっと、あなたは…」
何か言いかけた、そのとき、ゴォォッと重く鈍い音が部屋を揺らした。
「何事ですか!城の外はどうなっています!?」
そういって、女王が部屋から出ていってしまった。緊張が思いもよらぬ方法で止められてしまい、それこそ気が抜ける…。疲れがドッと押し寄せてくる、眠い…。このまま、目を、閉じてしまおう…
夢の中へ走れ 名前募集中 @kemsei826
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