かぐわしい百合の香りが匂い立ち、師匠との禁断の性愛、虐げられし者としての業を背負った夢使いとしての自負、そこに三十歳になっても振袖を纏う引け目と誇りを感じた短編小説でした。磯崎さんの夢使いのお話はどれも魅力的なのですが、普段は大桑さんが主人公なので、こうして女性が主人公のお話を読むと新鮮な気持ちになりました。
もっともっと彼ら夢使いの一族の物語に触れたいと思わせるのは、磯崎さんの紡ぐ文章から、失われたものへのノスタルジーと愛惜の念が漂ってくるからなのでしょう。
滅びゆく彼らの姿を描き、その集合体が一つの大きな物語として成立しているのは、まるで萩尾望都の『ポーの一族』を読んでいるようです。
これからも彼ら夢使いのお話を読めることを楽しみにするとともに、心より応援しております。