第23話
日付が変わろうかという時刻。
家族も寝静まり、夜独特の静けさが辺りに広がっている。
俺は学校へ忍び込み、再度屋上に向かった。
屋上につくとそこには女の子が一人立っていた。
暗くて顔は見えないが、俺はその女の子を知っている。
「月が綺麗ですね。」
俺は女の子の横に並んで二人で同じ月を眺めてそう言った。
「次の満月も一緒にみたいですね。でも。」
女の子は月から目を逸らさずに言った。
「でも、もう一緒に見られないんですね。」
「・・・うん。もう行かなきゃ。鍵を見つけた俺が
罪滅ぼしをしなきゃ。」
「もう何もかも無駄なのかな?」
「そんな事無いよ。だってここには君がいる。無駄なんかじゃない。」
俺は彼女の方に向き直り、その両腕を掴んだ。
「俺の場所は、君自身。君こそ俺の場所なんだ。」
「・・・意味分かんないんですけど。」
彼女の目からはしずくが垂れて、光って見えた。
「未来で言えなかったセリフなんだ。脈絡ないから意味わからなくて当然だよ」
彼女の腕から手を離し、扉に向かう途中で「バカ」と呟く声が聞こえて思わず苦笑いしてしまう。
「それじゃ。」
「未来には終わりしか残ってないのに!」
後ろは振り返らなかった。
扉に入り内側から鍵を締める。
これで俺の仕事は終わりだ。
本当はもっと早くにこうするべきだった。
時間の濁流に流されながら石動圭は、こう考えた。
「もっとかっこいいセリフ用意しておきべきだったな。」
と。
~完~
(byアオケン)
「石動圭は、こう考えた」 Twitterリレー小説:ゲリラユア @aoken_relaynovel
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