第2話 永い眠りを終えて
カタン、カタン、カタン・・・。
コンクリートで覆われた空間には靴の音だけが反響する。
長く続く階段を下りて行くと、金属製の見るからに重そうなドアが姿を現した。
何が待ち受けているのだろうと好奇心に駆られドアを開けようとしたが、困った。
ドアノブがない。
どうしたものかと周囲を見回すと、壁の一部分だけ微妙に色が違うことに気づいた。
触ってみると、押せるようになっている。
・・・押してみた。
するとその部分だけ一回転して裏側から指紋認証の機器が出てきた。
鋼鉄の壁に指紋認証・・・、よほど隠したい物なのだろう。
開くわけないと思いつつも指を合わせてみた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ガチャクンッ・・・
・・・えっ・・・開いた?
試しにドアを押してみると、さっきまでビクともしなかったはずなのだが
軽々と開くことができた。
なぜ開いたのかと疑問が頭を渦巻いていたが、とりあえず中に入ることにした。
中に入ると、ドアが自らの重みで自動的に閉まった。
部屋の中は薄暗くてあまり見えない。
壁伝いに電気のスイッチを探してみる。
カチッ
何とか電気をつけられたとほっとした ・・・・のだが。
部屋の内装を見て私は困惑した。
右手には銃の射撃練習場、左手には大きなシャッター、まっすぐ行くとアルミサッシのドア。
やはり一番目に付くのは射撃練習場だ。
遠く離れた人型の的には、以前誰かが使用したのか撃った痕が残っていた。
いったいなぜこんなところに、何の目的で、誰が使っていたのか・・・、
次から次へといろんな疑問が頭を巡る。
お次はシャッター。
横には暗証番号の機器がついていた。
指紋認証に暗証番号、なんなんだここは・・・。
ただ、先ほど自分の指紋が認証されたのを思い出し、こちらも試してみることにした。
4桁の数字・・・、・・・いつもロックに使っている番号を入れてみよう。
[8338]
・・・・・・ピピッ・・・・・・ガチャン、ガガガガッガガガガガガガガガガガガガ
やっぱり開いた。
あまりにも疑問が多すぎるので考えることは一旦やめようと思う。
シャッターが開き終えるとそこには大きな空間が広がっていた。
壁一面には大小さまざまな引き出しがあり、中央には腰くらいの高さの角柱がある。
角柱の上の面は斜めに作られていて、液晶画面が埋め込まれてあった。
何も考えず画面に触れると、突然画面が起動した。
少しすると、「アップデート中」の文字が写され、下のバーが伸びてゆく。
アップデートが終わると音声付で、
「荒神の盾 起動します。」
と、画面に表示された。
訳のわからぬままその場に立ち尽くしていると、画面が切り替わる。
新たに表示されたのは、名前と現在の年号・日付。
とりあえず、自分の名前を記入する。この画面はタッチパネルだったらしい。
日付記入のところで、下に〔インターネット接続〕のボタンがあった。
今現在、ネット回線はほぼ断絶されておりまともに使える状況じゃなかったが、
細かく記入するのがめんどくさくなり、押してみた。
「インターネットに接続中...」と表示される。
数秒後、正しい年号・日付・時間が表示された。どうやらつながったらしい。
「津田優一さん、今後『マスター』とお呼びします。」
入力が終わるともに優しい女性の声でアナウンスが始まった。
「はじめまして、マスター。困惑中のところと存じ上げますが、まずはこの装置について説明させていただきます。」
お、おう・・・。
「この装置は、万能戦闘支援物製造機、通称「荒神の盾」です。戦闘にかかわるあらゆる兵器などを製造できます。」
「銃火器はもちろん、戦車、軍艦、航空機、戦闘服、食料、燃料など、戦闘に欠かせないものを迅速に、いくつでも生産することが可能です。」
マジかよ。
「とは言っても、なかなかわかり難いと思いますので、まずは試しに作ってみましょう。」
あっ、はい。
画面が切り替わる。
「ここが最初に表示されるページです。ここで製造する物の種類を選択できます。」
上からボタンが三つ、縦に並んでいる。
〔兵器〕〔衣食住〕〔燃料〕
燃料のボタンだけ灰色に塗りつぶされ、押せないようになっている。
「では兵器のボタンを押してください。」
いわれるがままボタンを押す。
「次に、兵器のカテゴリーを選択できます。」
6つボタンが2列に並び、
〔歩兵〕〔砲火器〕〔戦車〕〔軍艦〕〔航空機〕〔その他〕
とある。
「では歩兵のボタンを押してください。」
ポチッ
「次に、歩兵武器の種類を選択してください。」
今度は武器の種類の選択画面。
〔ライフル〕〔拳銃〕〔スナイパー〕〔ショットガン〕〔砲〕〔手榴弾〕〔刃物〕〔その他〕
と、8つ表示されている。
「今回はライフルを作ってみましょう。」
ポチッ
「はい。ここで銃を選ぶことができます。また、右上のコマンドで、国別、製造年、型式ごとに並べ替えることができます。」
すごい・・・、世界中のマシンガン・サブマシンガンが表示されている・・・。
他にも数人で扱う機関銃や、固定砲座型のものまで数多く取り揃えてある。
「どれでも、好きなものを選んでください。」
どれでも・・・か。
私が選んだのは、AK-47。個人的に好きな銃だ。
「では最後に、ここで武器の製造、使用弾薬の増産、部品修理を選択できます。」
「〔製造〕を選んで、製造個数を1個に設定してください。」
製造のボタンを押すと、製造個数の選択に変わる。
1個単位の選択から、数十個、数万個の生産までいろいろとできるようだ。
そんじゃ、1にしてと・・・。
「では、〔開始〕を押してください。」
ポチッ
そして機械は動き出す。
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