第2話 対立する巨大宗教団体
突然、誠一の携帯が鳴った。誠一の宗教団体幹部の才口貴教だった。
「今から来れるか? 霊日会の最高幹部の上弦道正が自宅マンションに戻って来た。これから説破しに行くぞ。」
「才口さん、これからですか・・。今、真夜中ですよ。ちょっと非常識じゃないですか?」
「誠一、非常識なのは上弦の方だろ。霊日会の新聞では散々うちに対するデマを並べ立てやがって。何人のメンバーが、何日ここで張り込んでいると思っているんだ。望遠レンズのビデオで撮影しているメンバーもいるから安心しろ。とにかくすぐ来い。いいな。」そう言って、一方的に携帯は切れた。
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「誠一、お前がインターホンを押せ。もちろん偽名を使えよ。これも訓練だ。インターホン越しに少し話しただけで、会話が切れないようにうまく話せ。いいな。」
才口はそう誠一に言うと、手元のICレコーダーで録音を始めた。
誠一は言われるがままに一般家庭のインターホンを深夜3時に鳴らした。
「夜分にすみません。大日光会の横町誠二といいます。ちょっとお話がありまして。」
「・・・・・」
「夜分にすみません。大日光会の横町・・」と言い掛けたところで扉が爆発したように開いた。
「何だお前らは!いったい何時だと思っているんだ!」そう言っている上弦の左手には小型ハイビジョンカメラにRECランプが点いていた。
上弦は、小柄で気弱そうな見た目だが、静寂な近隣の窓にいくつか明かりが灯るほどの大きな声で捲し立てた
「大日光会は深夜に突然やってきて、一体何しに来たんだ、大日光会は! 警察呼ぶからそのまま待ってろよ!大日光会の横町さんよ!」
誠一はドン引きした。しかし、自分は横町という名字ではないので、比較的冷静に話ができた。
「上弦さん、そんなに大きな声を出さないでください。夜分に伺ったのは非常識でした。本当に申し訳ありませんでした。」
そう誠一がいうと上弦は真っ赤になった怒りの顔の口元だけがかすかに笑うと、さらにかん高い声で怒鳴った。
「大日光会さん、非常識だと認めたね。謝るなら、この場で詫び状を一筆書けよ! 詫び状だよ! 詫び状書けよ! 申し訳ありませんでしたと証拠を残せよ! 大・日・光・会さん!」
才口の顔から血の気が一気に引いた。というか凍り付いていた。
「才口さん、お詫びして帰りましょう。」そう誠一が話しかけても、才口は動けなかった。巨大宗教団体の幹部として、対立する宗教団体の幹部を前に、尻尾を巻いて帰ったという「録画」が残ることが許されないのか、警察を呼ばれて「犯罪まがいの活動をしている」ことがニュースや週刊誌を賑わすことを恐れているのか、それとも辺りに隠れて動画撮影している後輩たちに示しがつかないことを恥じているのか。
誠一はもう一度深く上弦に詫びると、才口の背中を押して、帰ろうとした。
しかし既に、真っ赤なサイレンが暗闇を赤々と照らし、逃げ場はなかった。
隣の狂った宗教 ~18歳から狙われる~ 宮祭 礼 @nico_nico_nico
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