第18話 4−3: 結婚式
式には、従兄弟も再従兄弟も、おじ、おばも集まってくれた。
そこそこ近い親族の中の私の世代で、やっと最後に私が片付いたからとも言っていた。
あるいは、おじ、おばもいい年だし、これから親族で目出度い席で集ることもなかろうということでもあるらしい。
そういうわけで、私の方は親族だけだった。彼女の方は、親族と友人だった。
小さいホールでの人前式。その後に立食形式のパーティーになった。
パーティーでは、私の方は親族が4人、軽いスピーチをした。従兄弟の一人は、ベルを持って来ており、5分でそれをリンリンと鳴らした。彼女の方は最初驚く人もいたが、私の方にとっては、それはジョークだった。ベルが鳴るたびに笑い声が挙がり、そのたびに笑い声は大きくなった。
「発表は続けて二件ということで」
そういったおじもいた。
彼女の方も4人がスピーチをし、それからホールの司会者が祝電を読み上げた。こちらでは、従兄弟もベルを鳴らすという馬鹿はやらなかった。
そのようなスピーチを背景に、私と彼女が、互いの親族や友人を紹介しあった。
式が終り、私たちはホテルの部屋に戻った。
何やらいまさらではあるが、落ち着かない感じで楽な服に着替えていると、上着のポケットからカード入れが落ちた。
隣の部屋で着替え終え、こちらに来ていた彼女がそれを拾った。
「これに職員カードとかが入っているの?」
「そうだよ」
私は彼女から受け取り、上着に戻そうかと思った。
「そうだ。引越す時に、本をどうしたのかって聞いたよね」
カード入れを摘み、揺らした。
それを見て彼女はうなずいた。
「面白いところに寄贈したんだ」
カード入れを開き、一枚のカードを取り出した。それを彼女に渡した。
「図書館?」
「あぁ。その図書館の無期限、無制限パス」
彼女はそのカードをゆっくりと見た。
「図書館なんて」
「そうだけどね。くれるって言うから貰っておいた」
彼女からパスを受け取り、カード入れに納め、そして上着に戻した。
その時、端末が鳴った。私は端末を取り出し、着信を確認した。
From: アキ, M=0
おめでとう。
そして、さようなら。
誰だろうと思った。しばらく端末を眺めていた。
マップス=0。その言葉が転がり出て来た。
「誰から?」
彼女の声で、私は顔を上げた。
「元友人…… かな」
私は端末を上着のポケットに収めた。
彼女の肩に手を回し、ソファーに座り、そして思った。
幸せとは、こういうことだと。
無知性の凱歌 Revised 1 宮沢弘 @psychohazard
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