夏目漱石のあまり読まれない作品に『文学論』というものがあります。
それは漱石の大学における講義をまとめた作品ですが、そこにはSFという概念がごっそり抜け落ちています。
それもそのはず、彼が生きた時代にはSFと呼ばれる作品はほとんどありませんでした。
ヴェルヌと漱石の生きた時代はかなり近いのです。
私はこの『SFってなんだろう?』を読んでいると、不思議と『文学論』を読んでいる時と同じ気持ちになります。「きざな誇学的紳士」がカフスを回転させて、講堂で難しい話をしている気持ちになるのです。眠くなります。
これだけの知識を持つ方ならば、これだけの論を展開できる方ならば、あるいは漱石の見落としたSFというジャンルを補完できるのではないでしょうか?
散文的につらつらと書かれてはいますが、膨大なSFを読み漁った経験と知識によって読者、ひいては作者の道標として惹きつける力と説得力を感じます。
この作品が体系的に、大げさに言えば『人を推し進めるために』再編されれば、それはこの作品が存在する意義を何倍にもするのではないでしょうか?
いつかこの作品が『SF論』に限りなく近いものとして、日本中の作家の道標となる事を期待します。
追記:わざわざ一話費やしてまでご説明頂き、ありがとうございます。いつかはこの作品を見た「日本文芸における自然主義」を覆す跳ねっ返りが世界に通用するSFを著す事を願っております。