クール系幼馴染1
※、女の子視点
※2、誠に勝手ながら、エピソードタイトルと内容が嚙み合っていないと判断したため改題させていただきました。
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私の名前は京堂結実(きょうどう ゆみ)
ま、そんな事はどうでも良い。
私の幼馴染の話をしよう。
私の幼馴染は、頭が悪い。
テストで赤点を回避して喜んでいるような奴だ。
私の幼馴染は、バカだ。
小学生の時、木の上に登ってターザンの真似をして、足の骨を折った。
中学生の時、遅刻をごまかす為に二階の教室の窓から入ろうとして失敗して、今度は足は折らなかったが、地面に着いた手を折った。
高校二年生の今、まだ高校生になってからデカイ事はやらかして無いが、何かやるんじゃないかとハラハラしている。
私の幼馴染は、明るい。
初対面の相手でも気兼ねなく話しかけて、あっという間に友達を作ってしまう。私にはとても出来ない。
私の幼馴染は、優しい。
バカで、時々とんでもない事をやらかして周りに迷惑をかけるけど、それでも万引きだとか、イジメだとか、そんな事は絶対にしなかった。誰かの悪口を言った事さえ無い。
だから私の幼馴染は、モテる。
客観的に見て顔も良いし、その大雑把な性格も優しさと合わせれば包容力という魅力に変わる。
だから、私はいじめられる。
小学校の時は一緒に遊んでいたりした。
主に奴の木登りに付き合わされたりした。
それゆえに奴は中学に進学した時も私に話しかけてきた。
知らない人に囲まれて、元々人見知りで小学校の時の友達すら少ない私と違って、奴の周りにはあっという間に人が着いた。
ませた女子が中1の五月で奴に告白した事もあったらしい。
私は、1人だった。
そんな私に、奴は話しかけてくる。
1人で本を読んでいる私に、奴は話しかけてくる。
私はそっけない態度を取るけれど、それでも奴は話を続ける。
告白を断られた女子はどんな気持ちになるだろうか。
奴の事が好きだけど踏み出せない女子達はどう思うだろうか。
自分の憧れの男が、クラスの隅で本を読んでいる根暗でクズのような女に嬉々として話かけているのを見た女はどうするだろうか。
自分の好意を受け入れてもらえず、明らかに自分に劣る女子に自分の好きな人を取られているのを感じた思春期の女子は、何をするだろうか?
おかげで私の中学生活は悲惨だった。
だから高校は、同じ中学の人間がなるべく入らない場所にした。
少し遠くて、少し頭の良い私立。
結果は、同じ中学の人間は1人しかいないという、最高の結果だった。いや、1人でも同じ中学の人間がいた時は驚いたけど、それでも中学に張り出された「どの進学先に何人行くか一覧」を見た時は嬉しかった。
その1人が、事の元凶たる私の幼馴染、酒見響(さかみ ひびき)だと知るまでは。
「ねぇー、響ー。日曜遊ぼうよー」
「そーだよー、リンリンの美声マジヤバだからさぁ」
「響の歌も聞きたいなぁー?」
メス共が懲りずに奴を誘っている。
どうやらカラオケに誘っているようだが、一対一で誘うのはハードルが高いのか、群れで共闘しているようだ。
「おっ!いいな!おーい、誰か一緒に行く奴いるー?」
しかし私の幼馴染はこういう奴だ。
ほら、鼻の下伸ばした男子達が俺も俺もと手を上げていく。
そして、さらに最悪な事に。
「おーい、結実ー。お前も来いよー」
私にも声を掛けてきやがった。
しかも、現状男4、女3という人数構成の中誘われた為、他のオス共も
「おっ!京堂さん来る?来ちゃう?」
「いいねぇ!京堂さんの歌聞いてみたいな!」
「やったぜ!」
と囃し立てる。
例え男女比が4:4になったところで私はお前達の誰ともくっつく気は無いし、ほかの女子もどうせ響狙いだ。可能性感じないで。
というか、まずカラオケに行く気がしない。歌なんてロクに歌った事ないし、そもそも曲をあまり知らない。
ついでに、私はこの手の明るいノリが苦手だ。
故に私は断るのだ。
「ゴメン、喉、痛いから」
頭の中では何パターンもの断り方を考えていたが、結局これだけの言葉を絞り出すのが精一杯だった。
「そっかー……また今度な!」
彼はそう明るく返事をする。
しかし、世界は彼と私しか居ない訳では無いのだ。
響。あなたは女子達が舌打ちしたのが聞こえないの?
お願い、私をそっとしておいて。これ以上私を苦しめないで。
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