第二話 シェアワールド
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ここは電子の世界。カクヨムワールドのアバターたちが住む国。ゲームと同じ風景、ゲームと同じ人々、ゲームと同じ法則で回る世界がある。そんなものがあるなんて人間たちは思いもしないけれど、本当は、ある。
空を見上げて少女は今日もマスターを待っている。夜夢子のアバター、ヨムヨムはオーバーオールにTシャツを着て、髪はおさげにくくって、アバターの写真枠に居る時の姿とは違う格好をしていた。いつもの髪型は作業の邪魔になるのだ。畑仕事の帰り道で、服も手足も泥が白くこびりついている。農家のマートンさんに頼まれてお手伝いをしてきた帰りだ。
人間たちはいつでも畑が勝手に耕されて芽が出てすくすく育って実が生っていると思っているが、本当はアバターたちが丹精篭めて作っている。その映像をモニター越しに見た人間が勝手に絵だと思っているだけだ。モニターを通してしか見ない人間たちには、四季折々、毎日違っているその景色はいつも同じにしか見えない。
どこまでも続くかと見える、舗装もしていない土色の一本道の右側はずーっとマートンさん家の小麦畑が連なっていて、反対側はマートンさんの弟、エドガーさんの牧場が、これもずーっと続いている。そして、この道をずーっと行けば街に出る。村と言ったほうが合ってるくらいの、小さい街に。
彼女の家が街にあるというわけではなかったが、彼女は彼女の小さいカメと一緒に街へ帰る途中だった。
「マスター、どうしちゃったのかなぁ。ねぇ、カメ吉。」
「きゅー。」
黒飴みたいな目が二つ、呼ばれてヨムヨムを見上げた。黄色い風船みたいな首には満面の笑みを表すような半月の口が、今は閉じてある。少女が飼っているカメのカメ吉だ。
この世界では、アバターとカメはワンセット。基本的に、カメ吉はヨムヨムの後ろをどこにでも付いてくる。そういう世界だから。人間が言うところの精霊なのかも知れないし、異次元なのかも知れないし、けれど人間だって自分が何かなんて気にせず生きているくらいだから、彼らもそんな違いは気にしなかった。人間の世界ではカメはくっついて来ないらしい事の方がよほど不思議だ。
アバターはマスターの考えている事はよく解かるのに、人間の方ではぜんぜん解からないらしいのも、不思議と言えば不思議だけれど、あまり気にする者は居ない。人間が、自分たちの世界に疑問を抱かない事と同じだ。
【ラノベ?】カクヨム・ファンタジー 柿木まめ太 @greatmanta
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