Jigsaw

ルミキシ

第1話

 新妻はビルから出てきた。

 駅前の寂れた商店街の端にある三階建てのビル。ビルと呼ぶのがふさわしいかすら危うい廃れたビル。元は橙色の奇抜なビルだが長年の風雨で、色は落ちに落ちている。

 新妻は寂れた商店街を見渡し、ビルを振り仰いだ。

「来るんじゃなかった」

 そうつぶやいた。

 新妻は経済誌の編集者である。まだまだ駆け出しの彼が、中小企業が起死回生をはかって行うプロジェクトの取材を任されたのだ。大仕事に歓喜を隠さず、勇んでいた新妻だったが、彼の取材は無念にも消え失せた。

「木田さんは、失踪届けが出されてるんです」

 雑用係兼受付がそう教えてくれた。彼女は触らぬ神に祟りなしで、首を突っ込ませてくれなかった。

失踪している木田とは言うまでもなく、取材を受けるはずの人であった。彼は今度のプロジェクトの総責任者で、これからのことは全て彼の頭にあった。

 その彼が失踪した以上、このプロジェクトの行く先がわかる。

 新妻は肩を落としながら、商店街を歩いていく。初の大仕事が虚しくも失敗に終わった。

 いや、終わらせられた。

 新妻は怒りを顔から隠そうとはしなかった。

 だが、誰に対しての怒りか、と問われれば答えは見つかりづらい。

 不在ではなく失踪なのだ。そうである以上、事件に巻き込まれていないとも言い切れない。しかし、木田以外に矛先を向ける方向は見当たらない。

 結局、まだ写真でしか見ていない木田に対して腹が立つ。

 「ちくしょうが」と思い、新妻は道端の石ころを思いっ切り蹴飛ばそうとしたが、狙いがはずれ少し転がっただけだ。

 そして本当に「ちくしょうが」と叫んだ。

 途端に我に返り、恥ずかしさから辺りを見回す。昼間っから大声を出すなんて、恥ずかしさの極みに感じられた。

 だが、見回す行動も的外れだった。

 寂れた商店街、いわゆるシャッター通りには昼間から人は見あたらない。人っ子一人。

 新妻は虚しくなり、大きなため息をついた。

 こんな商店街にある企業に希望を持った自分が馬鹿だったんだ。

 そう思い、やりきろうとした。

 しばらく歩いていると唯一と言っていい、シャッターの空いた店があった。

 看板に「安田玩具」の文字がある。ご丁寧に自体は古い。

 築数十年が伺える建物のドアは木製の引き戸。元の色がわからない木の色をしている。

 新妻はこの店に興味がわいてきた。シャッター通りに唯一の店。このことがきっかけだったのだろう。会社に戻る時間もあるが、取材がなくなった以上時間の余裕はある。

 引き戸を開けると、上手く開かずに、二度三度と力を加えなおしてやっと開いた。その途中にドアがきしむ音は鳴り続いていた。多少の苛立ちを覚えるほどのきしみ音だった。

 開け放たれた店の中は薄暗かった。小さな蛍光灯一つのみだったので、当然部屋の隅々までは光は行き届かない。子供ならまず近づかなさそうな店だった。その理由は、薄暗さのせいで不気味さが非常にあるだけではない。品揃えがそうなのだ。昭和の戦後、高度成長期に流行ったであろうおもちゃなどが、置かれており、現代的なおもちゃを探すほうが苦労する。ゲームなんてもってのほかである。

 新妻が店内を適当に物色していると、店の奥からレジ機のないカウンターへとまさしく老婆が出てきた。年齢を想像できないような顔だち。それこそ、おとぎ話に出てくるような老婆である。紙は全体が白髪で皺がいくつも刻まれている。目も細い。だが、背筋はしっかりとしていて、ますます年齢を想像させない。

「いらっしゃい」

 無愛想に老婆が言った。

「どうも」としか新妻には言えない。

「何か探してんのかい?」

「いえ、まあ、その、ちょっと」

 しどろもどろに新妻が答えに窮していると、老婆が的を得るように言った。

「珍しいから入っただけだろ。こんな商品、誰も買わないだろうよ」

「そうですね」とは、新妻には言えない。

 新妻は、当然のごとく、めんどくさい婆さんだな、と思った。この手の婆さんは苦手で仕方が無い。とりあえず、適当にあしらって帰ることにしよう、と決めた。

 当たり障りの無い質問を考えた末、結局最初に思ったことになった。

「どうして、こういうおもちゃを売ってるんですか」

 老婆は、細い目をさらに糸のように細くして新妻を見た。と言うよりは、視線で刺し殺すように睨んだ。新妻を測るように。

 新妻は本当に面倒くさいと思った。とっとと、答えろよ。

 老婆はためにためた後、結局こう言った。

「こういうものを売りたいからさ」

 拍子抜けをした。最早、それを超えてあきれ果てるような感じだった。

「今の子供たちはこういうおもちゃを欲しがらないけど、昔はこういうおもちゃがとても貴重だったんだよ。あんたにはわからないだろうけど」

 意外と流暢に老婆は話した。

「そうですね」としか言えない。

 新妻はいい加減にこの店を出て行くことにした。レトロなんてオシャレなセリフの似合わない古臭い店から。

 とっとと帰って、編集長に頭下げて、事情説明して、次の仕事もらおう。

 そんなことを考えながら、引き戸に手をかけた新妻の心境を知ってか知らずか、老婆はまた新妻を引きとめた。新妻がどう感じ、どんな表情をしていたかは大体想像がつくだろう。

「こんなものに興味ないかい」

「なんですか、一体」

 新妻が振り返ると同時に、老婆はカウンターの下から、何やら取り出し新妻に向かって放り投げた。それはきれいな放物線を描きながら、新妻の下に届いた。なかなかのコントロール。

 新妻の元に届いたそれは、約十センチ四方の何も書かれていない箱だった。箱の明け口にはセロハンテープ。説明も無ければ、バーコードすらない。

 新妻がそれをじっくりと動かしながら眺めていると、老婆が、「パズルだよ」と言った。

「パズル、ですか?」

「そう、ジグソーパズル」

「ジグソーパズル?」新妻にはいろいろと質問しようとしたことがあったが、とりあえず「何ピースですか?」と訊いた。

「さあ。わかんないね」

 新妻は今日だけで何度目かわからない溜め息を吐いた。

「で、これをなんで僕に?」

「さあね」

 さすがに老人相手と言えど、新妻の怒りも沸点に到達した。はらわたが煮えくり返らんと言わんばかりの怒りだ。老婆につかみかかろうとするほど。

 ドアに手をかけ、きしみ抵抗するのもかまわず、力一杯開けた。箱を手にしたまま、店を出た。

 ドアを閉める直前で老婆が「それ、あげるよ」と言った。

「どうも」と怒鳴り、ドアを閉めた。ドアが激しく音を立てて閉まる。反動で少し痺れが指に来たが、今の新妻はそんなもの気にはしない。




 出版社の自分のデスクに戻ってきても、未だに新妻の中には怒りが残っていた。小さくはなっているものの、芯のようなものが残っている。

 その芯が顔にも出ていたのだろう、隣のデスクの同僚記者、前田が話しかけてきた。

 前田は回転するイスに深々と座り、思いっきりもたれている。

「どうした、何かあったのか?木田さんのところの取材のことはもう編集長にも話してあるんだろ?」

「いや、そのこともあるんだろうけど」

「けど、ってなんだよ」

 前田はもたれていたのを止め、若干前かがみでイスを近づけてきた。長髪でボサボサ、髭も生えていてどう見ても同僚に見えない顔を。新妻は少しだけイスを離した。

「帰りにさあ」

 新妻は、帰り道に起こった出来事を前田に話した。

 前田は最初は乗り気ではなかったが、徐々に体がさらに前のめりになってくる。

 新妻は対処法として前田から横を向いて、デスクに肘をついて話した。

 全ての話しを聞き終えた前田の顔には、興味、という言葉以外何も無かった。幼児のごとくわかりやすい顔。おかげで考えてることも簡単にわかるが。

「で、その箱ってのは?」

 前田にその箱を見せると、前田は何も考えずに、何も言わずにテープを切り、中身をぶちまけた。

 中身はもちろんジグソーパズルのピースなのだが、そのピースも袋に入ってなかった。ピースが箱に生で入っていたのだ。

「馬鹿、お前ここで開けんなよ。編集長に言われるだろ」

「大丈夫だって」

 無邪気に何も考えず言う、前田がうらやましくもある。

「とにかく戻すぞ」

 そう言いながら、新妻は箱にピースを入れ始めた。それをつまらなさそうに前田が見ている。

 前田が最後のピースを新妻より早く手に取る。

「何だこれ?何も描いて無いぞ」

 新妻も箱からピースを取り出し確認する。

「ほんとだ。これも描かれてない」

「他のは?」

 新妻は箱から二、三ピース取り出し見てみるが、どのピースにも絵柄は無かった。

「なんだよ、これ」

 まじまじとピースを見ながら新妻が言う。

「こんなパズルつまんねえよ」

 前田が飽きた様子を克明に浮かべながら箱にピースを戻す。新妻も余ったピースを戻す。

 前田がイスを自分のデスクに戻し、引き出しを開けファイルを取り出し、ノートパソコンを開ける。

「さあ、仕事だ仕事」

「お前が言うかよ」

 またしても溜め息を吐いてしまう新妻。




 まだまだ若手の新妻の部屋は当然のごとく六畳一間だ。部屋の真ん中にテーブルがあり、ベッドと本棚、それにテレビとテーブルの上のノートパソコン。大体これくらいである。

 今、ノートパソコンはベッドに移され、テーブルにはあの箱が置かれている。

 キッチンで適当に自炊をしている新妻だが、箱が気になりすぎて手がつかない。

 最終的には適当なところで自炊を放り出し、テーブルをどけ、床にピースを散らばした。

 床には表面の白色、裏面の灰色でできた山が小さくできた。

 実際、新妻はこのパズルをしようとしているわけだが、果たしてこのパズルを完成させることはできるのか。絵柄がないということは、周囲の辺を除けば、他のピースはどのピースとも組み合う確立があるわけだ。考えただけでも気が遠くなりそうな作業だ。

 ゴールが見えない、そんな作業。だが、新妻は不思議とやる気になっていた。理由は二つある。一つは純粋な興味。このとても難しそうなこのパズルを完成させたい、という思い。もう一つは、あの老婆に見せ付けてやりたい、そんな気持ちだった。面倒で憎たらしげなあの老婆に完成したパズルを見せ付ける。それが、恐らく九割方の理由だろう。

新妻はとりあえず、周囲の辺を組み立てようとしたが、絵柄が無いとこの作業だけで時間が消えていく。

結局、新妻が完成させられたのは、わずか五ピースだった。

難しすぎて嫌になる作業を中断し、途中だった自炊に戻った。

チャーハン。

レンゲもなく、スプーンで食べている。

下手くそで見るからにボソボソだ。

平行して、パズルの作業に戻る。

当然、なかなかできない。

しかし、二ピースがくっついたものはいくつかできた。肝心の「どの部分」かは分からないが。

洗い物を済まし、再び作業にふける。

ただ黙々と。




翌日の出版社でのデスク。

新妻は自分のデスクでノートパソコンの前で大きなあくびをした。それこそ大きな。

「寝不足か?」

隣のデスクの前田がノートパソコンをいじりながら話しかけてくる。やたらとタイピングが早い。顔はこちらに向けられたので、もちろんブラインドタッチ。

「ああ」また出そうになるあくびをかみ殺しながら答える。「お前、彼女いたっけ?」

「いないの知ってるだろ」

「だよな」

「何でそんなこと訊くんだよ?」

「いや、彼女と夜な夜な、みたいな感じで」

「一人でパズルだよ」即答した。

前田はブラインドタッチを止め、イスにもたれかかり、つまらなそうな顔を新妻に向けた。

「で、どれくらい進んだんだ?」明らかについで感覚の発言。

新妻は対抗して、両手の肘を曲げ、手のひらを上に向け、首をかしげた。オーバーの文字がかすむくらいオーバーにした。

「全く。完成は程遠い」

「何ピースあるんだ?」

「三百ピース」

「意外と少ないな」

新妻はうんざりし、前田に指を指した。やる気がなく指も張ってはいない。

「多すぎるくらいだよ」

「そうなのか?」

「だってな、計算すればな……、ダメだ、面倒くせぇ」

「まぁ、どうでもいいけど」

前田は再びノートパソコンに向かい、打ち込み始めた。ブラインドタッチの速度とは比べられない。

「お前、もうちょっと興味持ってくれよ」

新妻はまた大きなあくびをした。



 それから一週間。

 この間に何があったかと問われても、別段答えることは無い。新妻はいつもどおり出版社に行き、前田とは話しながら仕事をする。パズルの話をしても前田が興味を持たないのも、変わらない。時々、仕事終わりに飲みにも行く。でも、大抵は家に帰ってパズルの続きをする。パズルの進行具合も相も変わらず。徐々に白い壁が出来上がっていくだけ。新妻は、ただ取り組んだ。ひたすらに、ひたむきに、黙々と。

 当然ながら新妻はあの日以来、あの店に行っていない。商店街にも。行く必要もないし、まだ行けもしない。

 取材先の木田も見つかってはいない。

 結局、一週間、何も変わることなく過ぎていった。




 パズルを解き始めて九日目。

 ようやく完成した。空いている箇所はなくなり、白い壁が床にポツンとある。

 新妻の心には、言葉では表し切れないような満足感が満ち足りていた。ただ、子供のようにパズルを解き、それを完成させたということに対して。そして、優越感も。あの老婆の挑戦的な態度をこれでくじくことができる。これをあの店に持って行けば、一連の言わば、戦い、は終了する。もちろん、戦いと勝手に思っているのは、新妻だけだろう。老婆が何の意図を持って、新妻にパズルを渡したのかはわからない。

 完成した絵柄のないパズルを見ている新妻。自然と笑みがこぼれてくる。他の人が見れば引いてしまうくらいの笑みである。

 連日の寝不足がたたってか、新妻のまぶたは急激に重くなってきた。ひどい隈を両目に作りながらまどろむ。ガクン、ガクンと眠りそうになっては、揺れて起き、それが繰り返される。

「額縁、買わないと、な」ほとんど言葉にならないような独り言を言う。

 重たくゆっくりとまぶたが閉じられ、新妻の体は床に倒れこんだ。死んでいるかのように眠りこけている。




 翌朝、新妻は窓から微妙に差し込む朝日が顔にダイレクトに当たり、半ば強制的に起こされた。まぶたをゆっくりと開けながら、見た視線の先には天井があった。真っ白とは言えない天井。

「ああ、寝ちまったのか」独り言を言いながら起きようとする。

 が、起き上がれない。

 体が僅かしか動かない。反転もできないし、軽く寝返りを打つこともできない。

 新妻の頭は、パニックに陥った。金縛りか?そう思うのも当然だが、筋肉が硬直されているというよりは、体の形に添ったケースにでも入れられたような感じだ。

 なぜ動かない。俺は何をした。パズルを完成させた。そして、眠ってしまった。

 体が動かない以上、必死に目を動かして周りを見ようとする。

 見えるのなんていつもと変わらない。右のほうにはテーブル。左にはキッチン。頭のほうは本棚が少し見える。足元のほうは……。

 壁が見える。普段見慣れた真っ白ではない壁紙。

 壁紙?

 壁紙しか見えない。

 おかしい。

 新妻の混乱は深く深く転げ落ちていった。どんどん加速していき、止まりそうに無い。デフレスパイラル。

 壁紙しか見えない。足元を見ているはずなのに。肝心の足元は太ももはおろか、膝や足首も見えない。何も見えない。

 俺の足はどこに行ったんだ?いや、まず、どこかに行ったのか?なんで、どこかに行ったと思えるんだ?じゃあ、他に何があるって言うんだ?でも、どこかに行ったってなんだよ、足がだぞ。

 ガチャリ

 新妻の頭が、そんな混乱で占拠されている時に、彼の部屋のドアが開いた。ドアの鍵がかかっていたかどうかは、微妙なところである。

 新妻は目だけでドアの方を見た。

 そこに立っていたのは、あの老婆だった。

 新妻のほうを見て、不適に微笑み、思わぬほどの速さで、靴も脱がずに近づいてきた。そして、手に持っていた四角い何かを新妻の目の前に持ってきた。新妻には最初それが何かわからなかった。だが、次の瞬間にはわかった。でも、それをなぜ老婆が持ち、なぜ持ってきて、なぜ新妻に近づけたのかはわからない。

 新妻の体が持ち上げられた。老婆に片手で持たれて、小脇に挟まれて。

 混乱の渦に飲み込まれている新妻の目の前には、老婆の痩せている腕。それに、新妻は支えられているのだ。

「おい、何がどうなってんだよ」

 新妻の問いに老婆は全く答えない。そして、ドアから出て行った。




 気がついて、目を開けた新妻が見たのは、あの店の中で見たおもちゃたちだった。その中をどんどん進んでいく。そして、カウンターの中に入り、後ろのドアを開けて、進んでいく。

 またドアを開け、コンクリートの壁で包まれた階段を下りていく。ひんやりとしていて寒い。無機質な感じが異様にする。かと、思えば、階段を下りた先はほの暗いいくつかの電球で照らされている。壁は床は全てウッド調。その部屋はやたら広く、所々で数メートルの壁がいくつかできている。一種のアトリエのようにも見えなくない。壁に何かかかっているが、老婆の腕でよく見えない。

 背中に何かが当たる感覚がした。老婆の体が新妻の間近にある。変な臭いがする。

 老婆が離れていくと、新妻は自分の体が浮いている感覚がする。

「俺に何をした」語気を荒く訊いた。

 老婆は歩き出し階段の近くまで来て、「いずれわかるよ」と言った。そして、階段を上っていった。ドアの閉まる音がする。

 新妻はとりあえず、辺りを眼だけで見回した。未だに体は僅かしか動かない。

 明かりが弱いのではっきりとは見えないが壁にはいくつも四角い箱のようなものがかけてある。

 その中に何かがある。最初、新妻は顔の石膏だと思った。

 しかし、じっくりと見てみると微妙にその石膏と思われるものは動いている。ほんの僅かだが。

 そして、新妻は驚嘆し、絶句した。

 明かりが少し強くなり、その石膏と思われるものが照らされた。

 まさしく、人の顔だった。人が、壁にかけられている。一体どういうことだ。

 しかも、その顔はまさしく、まさしく。

 木田だった。

 失踪届けの出されている木田だった。

 木田も、「新入り」の新妻の顔をどうやら覚えていたようだ。

「もしかして、新妻さんじゃありませんか?」

 新妻は、答えることができなかった。口を震わせて、瞬きをしきりにした。

「いや、あなたもですか」木戸の声には一種の諦めのようなものが感じられた。

「い、い、一体どうなってるんです?」

 木戸の顔の背景は、まさしく新妻の知っているものだった。前夜に完成させた、それであった。

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