オオカミのいる村
eXs
第1話
大きな目はギラギラしていて
大きな鼻はフンフンいって
大きな耳は悪魔のようで
大きな口は耳まで裂けて
大きな手はシャベルみたいで
大きな足はまるで怪獣
動物たちが暮らす村
嫌われ者の狼
とっても怖い狼
たった一人の肉食獣
郵便屋さんのヤギさんも
魚屋さんのペンギンも
大工さんのキツツキも
みんな狼を怖がります
みんな狼を無視します
村長さんちの豚の子は
ころころまあるい豚の子は
山で狼に会いました
けれども
だけども
無視します
なぜって?
見た目が怖いから
なぜって?
みんながそう言うから
豚の子供は言いましたお前なんか大嫌い
豚の子供は遊びます
山の中を走ります
はしって転げてぐるぐる回って
崖から落ちてしまいます
豚の子供は夢を見る
狼になる夢を見る
嫌われ者の狼は
とっても怖い狼は
とっても悲しかったのです
いつもいつでも独りだけ
山のはずれに住んでいる
豚の子供は聞きましたお前なんか大嫌い
目の前にいるのは自分でした
豚の子供は目が覚めた
崖から落ちた豚の子は
落ちてしまった豚の子は
オオカミさんに抱えられていました
大きな目は遠くまで見えて
大きな鼻はどんな匂いも見逃さず
大きな耳は助けの声を聞き逃さず
大きな口は人を呼び
大きな手は暖かく
大きな足はとっても速かったのです
小さな子ブタは助かりました
とっても小さなブタの子は
オオカミさんにあやまりました
あなたのことを知らないのに
嫌いと言ってごめんなさい
ほんとはとても優しいのに
怖いと言ってごめんなさい
子ブタが大人になったころ
村には一匹、オオカミのお巡りさんがいました。
〈end〉
オオカミのいる村 eXs @eXs
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