5.

 クラッチを繋ぎ変えた途端、カムシャフトから余計な力みがすっと抜けたのを感じた。鼓膜を突き通りまっすぐ脳まで届く甲高い駆動音は、V型12気筒しか放つことの出来ないまさに化石的代物。

 ハンドル伝いにエンジンの息吹を感じながら、ヘレはひたすらアクセルを踏み込み続けた。側で蛇のように湾曲する黒々とした水面の中、夜景が併走することを諦め、単なる極彩色の粒となるその瞬間まで。


 かつては市街地を守り、今は公園と化している堡塁へ近づけば近づくほど、マイン川はやさぐれる。ほんの数十キロほど離れた場所に立ち並ぶスレート屋根の住宅、自由に繁る緑樹から一変、都市計画に従って植えられた楡が堤を覆っていた。

 景観を守るのか、川そのものを守ろうとしているのか--無駄な努力だ。河原には家庭ごみや壊れた家電がぽつぽつと転がり、栄える場所の裏側をありありと見せつける。夜中に訪れようと考える物好きはいない。時々堤防を通りかかる酔っ払いも、川風と柔らかくだが確実に迫る暗闇から逃れようと、足を速めるのが常だった。

 ここに車を乗り込ませたのは日付が変わった直後。黒いBMWはすっかりこの場と、ヘレの手に馴染んでいた。



 映画の仕事ではあらゆる車両に乗り、あらゆる場所を駆け抜ける。だが今になって思えば、生娘のBMWをカメラの前で操ったことは無かったのではないか--もしハンドルを握る機会があったとしても、それは種馬のようにイキらせるため散々とスタジオの整備工に弄くられた成れの果ての姿。熟練の娼婦という奴で、使い勝手は良いが素顔など完璧な化粧の下に隠れて見えはしない。

 狼の皮を被った牛も悪くないが、本来はこうあるべきなのだ。決して尖ったり、喚いたりすることなく、低く語るもの。フォックストロットのステップほど左足を踏んでも、ぴったり付いてきて相槌を返すような。泣き言は許さない。甘えられれば、矯めたくなってしまう。愛したくなってしまう。



 己が馬鹿みたいにこだわりの強く、扱いにくい人間だとヘレは自覚していた。



 川が緩やかな湾曲を描き始め、左手の先に木々の切れ目を見いだした時、ヘレはまず白く光るデジタル時計へ視線を走らせ、それからメーターパネルまで目を持ち上げた。1時30分少し前。時速90キロ超。思ったよりも、はやくはない。

 カーブを無視して水へ落ちるまでの猶予は1分弱。浮かせた右足に吸い付いてくるようなアクセルペダルを感じながら、ヘレの目は川面に織り込まれた線条の光を見据えていた。波が迫るよう、それは息をする間に間近へと近づいてくる。

 ぐんぐんと下がるスピードメーターの針が50を指し示した瞬間、ハンドルを3分の1周分切り、サイドブレーキを引く。

 ごろごろ喉を鳴らすかのようだったエンジン音が、歌うように高まり伸びる。甲高いタイヤの軋みと砂塵に巻かれたまま、ヘレはスピンの慣性へ逆らうことなく身を任せた。

 180度ターンの締めはわざと行儀悪く。ハンドルを戻すのとブレーキの解除をほぼ同時に行えば、広いトランクのための巨大な尻が軽く振られる。再びクラッチを繋いで加速した時、唸る後輪の蹴落とした砂利が水に波紋を作った。

 今回はぼんやりしていたが、次は2周半の回転を目指そうか。この1時間ほど際限なく繰り返す行き来の復路へ戻りながら、ヘレは道行きと動作を頭の中で組み合わせた。ごとごとと、トランクの中で転がり続ける荷物の勢いが、ほんの僅かにかっ飛ばすための均衡を崩す。


 軽く傾いだ車体の動きに促されて意識したのは、がっしりとした木の幹の間に見える赤いボディ。いや、本当のことを言えば、とっくの昔に気付いていたのだ。こそこそと蹲り、意気地なく息を凝らすアウディの存在を。

 一端目の前を通り過ぎてから、ヘレは270度転回をやってのけた。突如真正面から向き合われ、運転手は度肝を抜かれたらしい。慌ててバックした際、寝起きの如く唐突に光った右のテールランプを木の幹へ派手にぶつけた。


 低い堤防を力任せに乗り越える猶予は、わざと与えたものだ。逃げない獲物を追う狩りなど、面白くも何ともない。

 きっちり5メートルの車間距離を開けたまま、ヘレは車道に這い上がったアウディの後ろへ付いた。対向するのがやっとというほどの細い土手の道路沿いには、人の住む住宅地はおろか酒場の一つもない。視界いっぱいに広がるボンネットが、怯えたように身を捩る。運転手の動揺がそのまま伝わるような動き。

 アスファルトと砂まみれのタイヤが擦れるじゃりじゃりと言う音が消え去った頃、ようやくヘレは真正面を見据えた。

 嫌と言うほど煽られ、前行車の動揺は一層深まったようだった。弱々しく瞬く割れたテールランプへ、フロントバンパーを擦りつけるほど接近する。実際何度か軽く触れ合って、振動がびりびりとフレームを伝うかのようだった。そのたびにお利口なアウディは慌てたように唸り、マフラーに痙攣じみた排気を送り込む。速度を上げようとしたり、小刻みなハンドル捌きを繰り返す動きは、ありたいていに言ってド素人だった。


 木々の間から漏れる高層ビルの灯が背後へ流れ始め、やがて街路樹そのものの間隔が広くなり始める。逃げていると思うのは錯覚だ。少しずつ、車は街へと戻りつつある。

 タコメーターが従順に跳ね上がるのを視界の端に入れながら、ヘレは踏みにじる動きで右足に力を込め始めた。バンパーを強く押され、不安定だったアウディの中心がぶれを止める。背後のBMW、そしてヘレに命じられるまま、進路は右へとずれ始めた。

 ハンドルを軽く左に切り、そのままじわじわと押し続けていれば、20メートルも進んだ頃だろうか。アウディの右半身が脱輪した。先ほど上った場所と違い、路肩の勾配はきつい。だめ押しの如くヘレが車体を左へ滑らせれば、とうとうタイヤは完全にアスファルトから外れる。

 左後部座席のドアを擦られながら、成すすべなく砂利の上を滑り落ちていく間抜け。自らでも不思議なほど、ヘレは酷く冷静な下目遣いで光景を見守っていた。そう、冷静だ。まだ肉体ばかりが先行せず、頭の中で次にやるべきことを組み立てるほどの余裕がある。


 出来る限りシャフトを擦らないよう慎重に車を河原へ下ろした頃、背後のアウディは何とか車道へ戻ろうと斜面に張り付き、エンジンを吹かし続けていた。太陽の下で目にすれば鮮やかなのだろう赤い塗装は、木陰の中にいると黒ずんだ血の色に見える。

 何気ない風で車を大回りさせ、焦りガタガタ揺れるアウディと垂直になる位置で停める。ニュートラルの位置で胴震いするチェンジレバーを右手で撫でながら、サイドガラス越しの横顔を覗き込もうと目を凝らそうとし、結局、やめた。

 先ほどから背後で意識の一部を奪い続けている蠢きが、決意を固めさせる。

 ギアを一速、二速と上げ、一気にアクセルを踏み込んだ。激怒したかの如く高まるトルクに、体がシートへ押しつけられる。

 こちらを振り向いたアウディの主が驚愕に目を見開き、シートベルトを外そうとする。やはり知らない顔だ。もう、そんなことはどうでもいい。顔全体が強ばっているのに、ヘレは衝突の瞬間、自らがとてつもなく楽しんでいるのを感じていた。



 BMWは、もう二度と走ることなど出来はしないだろう。だが本当に被害が激しかったのは、どてっぱらに体当たりを食らった女々しいアウディだ。土手と死んだヘレの相棒の間で、潰したアルミ缶のようにひしゃげて煙を噴いている。

 数十秒の朦朧から目覚めた後、ヘレはまずフロントガラスの小さな破片を腕から抜き取った。痛みは感じず、ただ血がぷつりと湧き上がって玉を作る。

 ドアを開けて地面に降り立ったときも、足はふらつかない。Tシャツの中に汗すら掻いていない。無骨なボンネットの向こうでハンドルに突っ伏している運転手を目にし、思っただけだった。もう少し、後ろにぶつかった方が良かったかもしれない。


 BMWのトランクは見かけこそ無傷なものの、もううんともすんとも言わなくなっている。鍵を開け、ヘレは中を覗き込んだ。

 気絶しているかと思ったが、男の目はぎょろりと剥かれてこちらを凝視する。つんと臭う吐瀉物とアンモニア。口元の汚れに、貼りつけたガムテープは既に浮き上がっていた。

 拒食症のように痩せた体躯は、引きずり出すことなど造作ない。気取ったウィングチップスの爪先が地面を削るようにもがくが、結束バンドで一つに締め上げられていれば文字通り無駄な足掻きでしかなかった。

 この青年を痛めつけるのは二度目。今度こそ本当に砕いてやった手首は腫れ上がり、纏めるバンドが思い切り肉に食い込んでいる。力無い腕の動きに沿ってふらふら揺れるたび、青年は鼻から荒い息をこぼし涙を流した。


 アウディの助手席を開け、一番に転がり出てきたのは無茶苦茶に乱れたマレット。男はとんだ悪運の持ち主だった。スーツの上からでも分かる強靱な筋肉が守ってくれたのだろう。血まみれだがまだ息のある顔を襟首掴んで見せつけ、ヘレは青年の口からガムテープを毟り取った。

「覚えは?」

 発作を思わせる首の振りと共に、「NO(ノ)」と何度も繰り返される。汚れきった横顔に嘘は感じ取れない。瞬きをすることも出来ないほど目が見開いているのは、きっとまだドライブの興奮が抜けきっていないからだろう。


 となると、新たな二人組はシニョーレ・サントロが派遣した監視員ではないという可能性が打ち出せる。

 意識を失った体を探れば、仮説は確信に変わった。スーツのポケットから出てきた財布には、ユーロ札とクレジットカード、それに免許証。二つは名義が違うものだった。免許証に記された国籍はドイツ人。偽造ならば出来は悪くない。

 その場でしゃがみ込み、地面に転がした青年の顔を平手で叩く。細身のイタリア製スーツはとんだはったり。まだ子供だ。些細な暴力で、怯え歪んだ顔を背けようとする。

「おまえ、僕たちに何の用だ」

 答えは戻らない。ありとあらゆる液体でぬるぬる滑る顎を右手で掴み、反対の手の親指を閉じてしまった瞼に押し当てながら、ヘレはもう一度同じ質問を繰り返した。眼球へぐっと加わった圧力に、青年は思い出したのだろうか。日付が変わる前に、ここよりもっと西の川辺に転がしてきた相棒の運命を。まあ、彼も死んではいまい--高々スパナで後頭部に一撃加えられ、足をへし折られた程度で。

 今の事態が奴よりずっと悲惨なのだと、こいつに認識してもらわなければならない。いつの間にか乾いていた唇を舐め、ヘレは親指に一層の力を込めた。

「シニョーレ・サントロはどうして僕たちを追う」

「俺たちは」

 ぴくぴく震える瞼の下で眼球がたわむ。青年は喘ぎ、臭い息と共に潰れた声を絞り出した。

「ボスに、命じられただけで」


 答えにならない答えなど耳にせずとも、本当は理由など分かっていた。彼が普段暮らすロサンゼルスで言うところの「ハワード・ヒューズ形式」という奴なのだろう。病的な金持ちは、自らの愛人の素行調査をする探偵に、別の探偵を付けて見張らせる。

 男のシャツから汚れていない部分を見つけて手を拭い、ヘレは立ち上がった。見上げる空に掛かるのは半月。賑やかな街では霞む光も、涼しげに静まり返った岸辺では少し勢いを取り戻す。身に纏った薄雲が流れていくのも気に掛けず、水面に平静が戻るのを待っているのだろう--ムーン・リバー。そういえば、そんな曲があった。

「ご主人に伝えとけ。仕事はやる。大人しく引っ込んで、残りの金を勘定してろ」

 胎児のように身を丸めた青年が覚えられたかどうか分からないが、既にヘレは別の問題に直面していた。

 ここからガレージまで、歩いて帰るのか?



 結局歩いて帰ったので、ガレージへたどり着いた頃には三時を回っていた。川沿いの景観を乱すと撤去されなかったのが不思議なほどだ。殺風景なプレハブが、ただ義務を果たすだけと言わんばかりに整然と白く連なっている。明かりが点っているのは、彼の借りたスペースだけだった。


 半分ほど開いたシャッターを潜れば、車二台を停められるほどの空間いっぱいに、じわじわとした熱気がこもっていた。身を丸めてしゃがみ込んでいたマティアスが顔を上げ、マスクを僅かにずらす。傍らに鎮座する、ヘレの大事なBMWの7E38に掛けてあったタオルを投げてよこしたとき、ちらりと覗いた口角は呆れで微かに持ち上がっていた。

「そんな格好でほっつき歩いて、よく警察に通報されなかったな」

 左腕の怪我は、感覚としてなら蚊に刺されたようなものだ。ケチャップを塗りたくったかの如く染まった皮膚に今更気付き、ヘレは外に設置された蛇口へ向かった。

「どうだった」

「予想通りサントロの手下だ」

 濡らしたタオルを絞り、乱雑に拭う。傷は一カ所だけではなかったらしい。全て血が止まっているのは幸いだった。

「断るか」

「何故」

 答えが分かっている質問は、先ほどと違い安堵を連れてくる。

「今日一日これと格闘してる手間を、無駄にさせてたまるか」

 ガスバーナーのボンベは既に山となっていた。業務用の塗料袋はまだ三つ目が新品のまま置いてある。おそらく二袋目の残りが、ごとくの上に乗せられた鍋の中でじっくりと煮詰められていた。

「アウディもイタリア人?」

「聞き出せなかった」

「逃げられたのか」

「違う」

 コンクリートの上へ投げ出された財布の中身を、マティアスは丁寧に検分した。

「調べとく」

 それ以上、追求がなされることはない。何事もなく大きな匙で鍋の中身をかき混ぜては、とろとろとした乳白色の液体を掬い上げる。


 そういえばこの男はKSKの演習でも、こうやってガスバーナーの前に陣取っていた。シュヴァーベンの山々に潜伏する日々、全てをなぎ倒す吹き下ろしの中、死にものぐるいで穴を掘り装備を埋める部下たちを後目に、ブナの木の下でコーヒー入りのコッヘルを守るという最重要任務についていらしたのだ。疲労困憊したヘレ達の顔を目にして、小隊長殿は何とのたまいなさったか。

「ぼんやりしてると夜が明けるぞ」

 あの時と同じくぼんやりしているのはヘレだけで、マティアスは仕事に勤しんでいる。

「あのビルに使われてるのは普通の強化ガラスじゃない。最新式の化学強化ガラスを二枚重ねにしてはめ込んである……軍の座学でやらなかったか」

「覚えてる。強度が高いんだろう」

「そう。ただしこれには欠点があって」

 マティアスは蛍光灯の光が届かない部屋の隅を、顎でしゃくった。

「風冷強化ガラスは傷なんか付けようものなら一瞬で分子崩壊を起こす。化学強化式には、その特性がない」

 確かに、ガラスカッターを突き立てた途端、嵌めてある丸ごと一枚が粉々に砕け散らないのは有難い話だ。だからと言って、関門が無くなった訳ではない。壁に立てかけてあるガラス板は、厚みが20ミリをゆうに越えている。

「まあ、ビルの高さと風圧から考えて、そんなものだろう」

「これを切断するのか」

「君の発案だぞ。責任を持て」

 ボンネットの上に乗せてあるバケツを指さし、マティアスは言った。

「姉貴のドライヤーを借りてきた。本番用は今日届くから、今はそれで我慢しろ」

「ドライヤーの熱って、300度もあるのか」

「ない。君は今度、ビルの外壁にぶら下がりながら30分も窓に熱風を当て続けるんだぜ。地面に立って一時間我慢するくらいできるだろう」

 腕にはめた時計の針は、4時へと着実に近づいている。朝一番で用事はあっただろうかと考えたが、特に思い当たる節はない。マティアスの荷物が届くまで、やるべきことは何も。

「おまえは少し寝ろ」

「何だって」

 匙を取り上げて命じれば、マティアスはきょとんとした顔でこちらを見上げてきた。

「今日はゲラーマンに会ってくるんだろう」

「そうだけど、昼からだし」

「僕は一日何もない。後は一人で出来るよ」

 カリカリしてちゃ、効率も上がらない。そう口にはしなかった。マティアス自身、気づいている事だろう。

 カレンダーはろくな予定が書き込まれることもなくちぎり取られるばかり。約束の日まで、時間があるわけではない。


 しばらくの間真顔でヘレを凝視した後、マティアスはふっと息をついた。

「それじゃあ、お言葉に甘えて」

 車のトランクから毛布を引っ張り出し、暗がりへと向かう。本当に一昼夜、彼はここへ篭もっていたのだ。強ばった体が作るぎくしゃくした歩みと、それに蹴散らされるデリの包み紙が、今更ながら実感させる。

「振動計とカッターはバケツの中。切断まで終わったら起こしてくれ。濃度の調整は今日中に済ませておきたい」

「分かった」

「いやに晴れ晴れとした顔だな。一発抜いてきたみたいに」

 子供のように毛布を抱えたまま、マティアスは緩慢な動きで振り返った。

「君は疲れてないのか」

 尋ねられ、ヘレは自分自身へ同じ問いを投げかけた。肉体は、くたびれきっているという程でもない。飯も睡眠も一定以上取っているし、激しい労働とは無縁。精査する必要があるとすれば、気持ちについの問題だった。

 鼻腔にはまだ、ガソリンと汚物の匂いがこびりついてる。目の奥で弾けるネオン、白い月。氷のようなアドレナリンが毛細血管にまで染み渡り、決してぬるまることなど無いまま循環を続けていた。


 不快感は一切ない。ただもうしばらくの間、寝付くことだけはどう頑張っても無理そうだった。

「目が冴えてる」

 ぶら下げたバケツに目を落とし、そう答える。そうか、と短くよこされたのは、心得ているのか、それ以上の会話が億劫だったのか。確かめることは出来たが、ヘレはそのままマティアスに背を向けた。

「言って2時間も眠れないな。じきに夜が明ける」

 後ろ姿に何か書いてでもあったのだろうか。マティアスは嚙み殺し損ねた欠伸とともに言った。

 そうでもない、と思いながら、ヘレは横目を向けた。予想は外れ、夜の帳はもう徐々に開かれ、開いたシャッターから忍び込む闇は漆黒から濃紫へと変わりつつある。

 だが後少し。もう少しだけ、打ち込みたい。飴玉を舌の上で転がすよう、全身にみなぎるこの感覚を味わっていたい。

 それが良くないことなのだという一般常識から目を逸らすため、ヘレは煮立った鍋を取り上げた。

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