写不真
「ねえ、これ見てよ」と眉間に皺を寄せた彼女が一枚の写真を渡してきた。
そこには、彼女とその友達が仲良くポーズを取っている。背景はどこかの水辺だろうか。
しかしその写真を見て、僕は単純に「楽しそうだね」と言葉にすることはできなかった。それには理由がある。彼女の不穏な面持ちが隣りにあったからだ。
自分の思い出を共有したいというなら、こんなに不安げな表情はしない。渡されたこの写真に原因があるのだろうと理解できるが、いったいこれのどこにその原因があるのか。
「これその友達から送られてきたんだけど……」
送られてきた写真。彼女はこれを見てすぐにその違和感に気づいたという。僕も目を皿にして違和感を探す。
写真は、真実を写すと書いて“写真”というぐらいだ。ここに写っているものが真実だとするなら、違和感はひとつしかない。
「この君の隣りにいる友達は、本当に友達なのかい?」
そう言うと、彼女は首を傾げた。
「何言ってるの、当たり前じゃない。そこじゃないわよ。ここ。ほら、湖のところに人の足みたいな物が出てない?」
彼女はそう言って写真の一部を指さす。しかし、僕の目に映る違和感は、彼女の隣で幸せそうに写る男にしか感じなかった。
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