天空の真実④
私の決意が固い事を確認すると、「お父さん」こと黒龍ヶ原氏はクルリと私に背を向けて、自分が座っていた椅子の背もたれの奥の壁の方に歩き出す。
「付いて来なさい。この先に、この世界の真実がある。」
と言って、私達の進む道を示した。
私と弓木は黒龍ヶ原氏の後ろに付いて行き、壁と同化する様に偽装された扉の前に出た。
「この先、これから目の当たりいする事はすべて真実で、嘘偽りの無い事実だ。その事を十分承知したうえでこの扉をくぐる事だ。」
黒龍ヶ原氏はそう強く言って扉を開き、先に進んで行った。
私達も、それに続いた。
扉の先は、本殿に上がってさっきの黒龍ヶ原氏の居た部屋に来る途中の様な道が続いていたが、しばらくすると天井が徐々に狭くなり、大人一人がやっと通れるスキマ位の幅になる。
私達はまだ子供・・・なのでスルリと抜けられたが、黒龍ヶ原氏は若干キツそうだった。
「母さんの言う事を聞いて、少しはダイエットをするべきだったな。」
と、苦笑いをしている独り言が聞こえたので、私はクスりと笑った。
その狭い通路は距離にして50mはあろうか?と言う程長かったので、このまま行き止まりになるんじゃなかろうか?と思っていた所、スっと広い空間に出た。
広い空間は何故か地面が畳張りになっており、一見すると大きな旅館のかなり大きな大広間?と言った具合の作りになっていた。
「まず、先に注意しておく。この先の扉でこの本殿は終わりだ。しかし扉の先はドコにも足場が無いので、出来れば扉を開けてその先を覗き込む様にして欲しい。」
と、黒龍ヶ原氏が言う。
「質問良いですか?扉の先にドコにも足場が無いと言うのはもしかして、宙に浮いている様な状態を俺は想像しているのですが、この考えた正しいでしょうか?」
弓木が、私が考えこもうとしていた所を先に質問してくれたので、ちょっとホっとしながら黒龍ヶ原氏の答えを待った。
「・・・そうだ。弓木君の質問は大体合っている。ただ、この先は自分たちで確かめるが良かろう。」
と黒龍ヶ原氏は言って、私達を扉の前に立たせた。
「さぁ、扉を開けてごらん。」
私は言われるがままに、扉を開けた。
扉は、弓木の想像通り中空に浮いている様な、そんな状態になっていた。
中空なので、当然足場は無く、もしこの外の世界に出ようとするなら、この烏天狗の羽根で空を飛ばなければならなかった。
「この空、飛んでも大丈夫ですか?」
弓木が、後ろに居る黒龍ヶ原氏に尋ねると、彼は大きく頷いて、
「真実を目の当たりにしてこい!」
と、言い放った。
私はまだ飛ぶのがヘタクソなので、まずは弓木に飛んでもらい、またしがみつく様に飛び出す事にした。
飛んでいるうちに感覚を掴んで、弓木ほどではないがそこそこに飛べる様になるだろう?と考えていた。
弓木が空に飛びだした。
さっきの、本殿に向かう途中の様に颯爽と空に飛ぶ弓木に習って私も飛び出した。
スゥ~っと、中空で身体が軽くなり、羽根の浮力の力で中空に漂った状態になる。
そこへ、先に飛び出した弓木が来て、私の手を掴もうとした。
「何か変だ。」
弓木がそう言ったのとほぼ同時に、弓木の姿が黒い鳥の姿になった。
鴉(カラス)だ。
な、何で?と思っていた私も、いつの間にか鳥の姿になっている。
背中で羽ばたいていたはずの翼が両腕の付け根辺りで羽ばたき始めたので、ちょっと普段とは全く違う感覚になったが、それ以外は普通に飛べていたので、そのままその先の世界も見に行ってみようとした。
「おい、見ろよ!あそこに居るの、ユッキー先生じゃないか?」
弓木がふと、眼下に広がる街並みの中に知った顔を見つけた。
「本当だ、ユッキー先生だ。後ろから冴絵ちゃんも来るけど、何かちょっと違う様な。」
良く知る、あの空を飛びたい部活のメンバーを見つけた私達だったが、彼等には普段とは違う違和感を感じずにはいられなかった。
そう、それは、
「あの二人、羽根が無いよ?」
二人だけでは無かった。
眼下に広がる街並みを歩く人たち全てに、羽根が生えていなかった。
「この世界は一体・・・・」
「詳しい話は筆頭宮司に聞こう。」
私達は、違和感だらけの世界の存在の意味を宮司に問うため、本殿に向かって飛んだ。
もし人類がデフォルトで、羽根の生えた生物だったら 梢瓏 @syaoruu
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