天空の真実③

開かれたふすまの先にいた人物は、ちょっと前に見た事がある様な人物だったので、実はあまり驚きは無かった。


あれ?

つい最近って一体どこで見たっけ?と、思い出しながら部屋に入った。


部屋は畳20畳ほどの広間で、天井や欄間には美しい模様の装飾が成されていて、流石本殿!と言った作りになっていた。


弓木が、「黒龍ヶ原」と読んだ筆頭宮司の正面に立つと、今度は正座して首を垂れる。


私もそれに習って、急いで同じ事をしながら思い出した



「お父さん・・・・だよね?」


そう。


つい最近と言うか、毎日見ていた、お父さん。


いや、お父さんの役をやってくれていた人~と言うべきだろうか。


その「お父さん」が、目の前に鎮座しているのだ。


私が「お父さん」と呟くと、弓木は悲しそうな顔をして頭を上げた。


「驚いただろう?」


驚いて呆然としている私に、そう言った。


「お父さん」である所の黒龍ヶ原氏は、驚いて声も出せなくなっている私に話しかけてきた。


「果南、驚いただろう。実はお父さんの仕事は会社員じゃなくて宮司だったんだ。しあも普通の宮司じゃなくて筆頭宮司、つまり烏天狗信仰者の頂点に立つ者とか、そりゃ驚くよな~。」


想像していたよりもかなりフランクと言うか、いつも家で話しかけて来る様なテイストで話しかけてきたので、私は驚愕で凍てついた心が少し溶けて行くのを感じた。


「いつから?ううん、ずっと前からよね。私を烏天狗の庭で拾った時からだよね?」


そう問いかけると、ゆっくりと頷いて、


「弓木君、色々ここに来る前に生い立ちを話しておいてくれたんだね。」


と、弓木に軽く頭を下げた。


「宮司、そんな頭を上げてください!俺は特に何も、ちょっとした世間話をしただけですよ。」


と言いながら、弓木はかなり深々と頭を下げた。


私は、二人を交互に見ながらまだ驚いていたけれど、「お父さん」である宮司の黒龍ヶ原氏は、私が知りたい真実を話してくれそうな顔になっていた。


「本当に、いいんだな?これを聞いたら多分お前は、今まで通りの学生生活を送れなくなる可能性が高いぞ?」


私の左肩に手を置いて、「お父さん」である所の黒龍ヶ原氏は私の瞳の奥にあるかも知れない迷いを見定める様に言った。


私は、


「迷ってない・・・って言ったら嘘になるよ・・・でも、真実を知りたい!って言うのは嘘じゃない。これじゃ駄目かな?」


言いながら、黒龍ヶ原氏の目を真っすぐと覗き返した。


「お父さん」は、ふぅ~っとため息をつくと、その背中にある大きな黒い羽根をバサバサと何回か羽ばたかせた。


このバサバサは、普段の白い羽の時、何かに動揺したり驚いた時にやっている「お父さん」のクセだ。


「お父さん」はもしかしたら、私がこの先の真実を知るのを拒否すると思っていたのに、意外と動じないで知ろうとしている事に驚いているんだ!と分かったら、何だか目の奥が熱くなった。


熱くなったけど、私はこれから真実を知ろうと思う。


それは揺るぎない、私の決意だった。

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