天空の真実②
大きな本殿を目の前にして驚きを隠せないで居ると、弓木が呆れた口調で
「そんなに大きな口を開けていると、口の中に星が落ちて来るぞ?」
と、これから何かの悪だくみをしそうな感じで言って来た。
「え?星が落ちて来るほど高い所なの?」
逆に聞き返されて、弓木が言葉に詰まっていた。
そんなアホっぽいやり取りをしていると、どこからともなく誰かの低い声が聞こえてきた。
耳を澄ましてみるが、私にはどうやっても悪霊のうめき声にしか聞こえなかったが、弓木にはその声の主が何を言っているのか理解出来ている様だった。
「ほら、筆頭宮司様がお待ちだ。急ぐぞ!」
謎の言葉を聞いた弓木は、また私の手を掴んで、今度は早歩きで本殿の建物の中に入って行く。
階段を5段ほど上がると、本殿内で移動する時に履く専用の草履に履き替えた。
草履だと脱げやすいんじゃないかと思っていたら、足の指で掴んだ鼻緒が結構しっかりしていて意外と歩きやすかったのが印象に残った。
手を引かれて歩いていたけれど、この手を引かれて歩くのにちょっと疲れたと言うか、弓木手動で移動している感じにちょっと違和感を感じたので、
「そろそろ手を離してよ、私一人でも歩けるよ。」
と言って、手を離してもらった。
弓木は一瞬赤くなった?(様な気がした)と思ったら、急にばつが悪くなった子供の様な顔をして、スっとそっけなく手を離した。
「悪かったな、長時間掴みっぱなしで」
そう言って、今度は並んで歩くように促してきた。
並んで歩きながら、
「随分長いこと歩いてきた気がするけど、一体いつになったら筆頭宮司様と言う人の所に着くの?」
と聞いてみた所、
「あと10分位は歩くぞ。この本殿、外観の見た目よりも遥かに大きくて、ちょっとした山位の大きさはあると思うから。俺も最初に来た時はかなり迷ったりして時間がかかったしな。」
と言って苦笑いをした。
ふーん、前に来て迷ったのか、それはその状況をリアルタイムで見てたらさぞかし面白かっただろうな~と頭の中で笑っていたら、弓木の顔が徐々に仏頂面になって行くのが分かった。
あ、これは、私の頭の中を読んだな?!
勝手に!!
本当、この能力は困りものだ。
どこかで、何とかして弓木に読まれない様にする対策を講じなければ!と思わずにはいられなかった。
そうこうしているうちに、筆頭宮司様の居る部屋に辿り着いた。
大きくて重厚そうなふすまのある部屋だ。
あと10分位~と言われてからだと、想像していたよりは早く着いた感じがする。
多分あの、脳内を読んだりされたり弓木の過去の経験で面白かったお蔭かもしれなかった。
部屋の正面で歩みを止めて立ち止まると、弓木が深々と一礼したので私もそれに習った。
そして、
「筆頭宮司、黒龍ヶ原様。弓木海斗、ただ今惨状致しました!」
そう言って、弓木が大きなふすまを開けた。
私は開かれて大きくなる隙間の先に居る人物の姿を、やっと見ることが出来た。
その人物は、しかもつい最近、どこかで見た事がある様な・・・・そんな気しか無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます