第7話 炭を語る
服も乾き、ようやく全裸から開放された僕は、キュルルを肩にのせ洞窟に戻る事にした。
洞窟前の焚き火も消えている頃合いではないだろうか?
洞窟に戻る途中、焚き火用の枝葉を集めながら、炭を取り出すための枝と包んで保管する為の葉っぱを探した。
昨日今日と晴天に恵まれたが、ここが雨の降らない地域ではない事を自生する植物が教えてくれる。
せっかく作った炭も雨に濡れてしまっては台無しだ。
対策として出来上がった炭を小分けにし、洞窟の中で保存しようと考えたのである。
必要な物を揃え洞窟へ戻ると、目論見通り灰に混ざって炭が出来上がっていた。
早速、拾ってきた枝で炭を取り出し、完全に冷めている事を確認すると葉っぱの上に乗せていく。
炭はとても優秀だ。
燃やして暖を取る以外にも匂いや湿気を取り除いたり、ろ過したり、作物を栽培する際には土壌改善効果も期待できる。
たとえ使用した事によりその効果が落ちたとしても、煮沸や天日干しなどをすれば再利用も可能だ。
生活環境が今後整ってくれば活躍の場も多くなるだろう。
これからも毎日コツコツと作り溜めしていく方針だ。
「さて、炭を保管する場所は何処にしようかな?」
洞窟内に保管することは決めていたけど、昨日探索した時には安全の確保を重視していた事もあり、物の保管に対してまで気がまわらなかった。
あまり知られていないが、炭は保存状態が悪いと着火時に大きな音をたてて弾け飛ぶ爆跳を起こす事がある。
爆跳とは湿気を吸った炭が急激に加熱された事により水蒸気爆発を起こす現象で、保存中の吸湿が主な原因になる。
その他にも、保存中に臭気を吸うと着火時の加熱により悪臭を放つ事もあるので注意が必要だ。
これらを考慮すると炭の保存場所は、雨露にさらされることもなく、湿気も無く、臭いもしない場所となる。
「そんな場所あるかな?」
かなりシビアな条件に、僕は首を傾げた。
傾げた首にキュルルが頬ずりをしてくるのでくすぐったい。
お返しとばかりにキュルルを指で撫で撫でしながら炭の保管に適した場所を探す為、洞窟の探索を決意したのだった。
僕は移した炭を葉っぱで包むと、持っていた紐で移動中ほどけない様に十字に結んだ。
炭に葉っぱの香りが移る可能性があるけど、嫌な匂いでは無いので問題ない。
準備を終えると、僕は空を見上げた。
この世界に来てからまだ二日目だけど、一度も雨に降られた事がない。
当然、雨が降った後この洞窟がどの様な状態になるのかも分からない。
洞窟前の野原や森の状態から考えれば、一時的な土砂降り程度ではこの洞窟が水で溢れかえることは無いと思うが、入り口から伸びる通路には水の通り道が出来るかも知れない。
そう考えると、入り口付近の通路に炭を置くことは得策ではないと思う。
残された場所で安全が確認できているのは、僕が目隠しをされたままの状態で横たわっていたあの空間しか思いつかなかった。
僕は立ち上がり、両手で頬を軽く二回叩き気合を入れると、キュルルと共に洞窟の中へ入っていくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます