第4話 新しい火起こしの方法
僕は、パチパチと火の爆ぜるような音で目を覚ました。
重い瞼を開けると、昨日集めた枝葉が燃えているのが視界に入ってきた。
「火事っ?」
僕は慌てて跳ね起きた。
急いで消火しようとするが、枝葉の辺りに延焼するようなものは何も無く、消火する必要がない事に気付く。
とりあえず安心した僕は、ほっと胸を撫で下ろすと同時に素朴な疑問が浮かんだ。
「何故燃えているんだろう?」
昨日の夜「もみぎり」に挑んだ僕は見事玉砕。
その後、赤い毛玉のような生き物と再開し、そのまま寝てしまったはずだ。
状況を考慮しても、自然発火するような条件は何一つ見当たらない。
不思議に思った僕は、もう一度燃えている枝葉を観察してみたが、やはり怪しい所は見当たらなかった。
燃え方も、助燃剤などを添加した燃え方ではなく、ごく普通に燃えているだけだ。
燃えている事とは直接関係ないとは思うが、燃えている枝葉の付近で赤い毛玉のような生き物がぴょんぴょんと楽しそうに飛び跳ねている。
「そんな所に居ると危ないよ。」
僕は、昨日放り投げた棒を拾うと赤い毛玉のような生き物を火から遠ざけるようあしらった。
すると赤い毛玉のような生き物は戯れていると勘違いしたのか、棒をぴょんぴょんと避けながら嬉しそうな表情を浮かべる。
そして、何を考えたのか棒の先をぱくっと咥えたのだ。
「こら!」
僕は、その愛くるしさに笑みを浮かべながら怒ってみせる。
棒を引き抜くと、咥えられた部分から先が無くなっていた。
「赤い実以外に木も食べるのか?」
僕は新しい発見に心なしか胸躍らせ、引き抜いた棒の先端をみて驚いた。
赤い毛玉のような生き物が咥えた部分は、噛み千切られたのではなく溶けていたのだ。
その証拠に棒の先端は黒く焦げ、もくもくと煙を上げていた。
「もしかして?」
僕はまだ燃えていない枝葉を掻き集め、もくもくと煙を上げている棒の先端を突っ込み、軽く息を吹き掛けた。
すると、次第に枝葉はパチパチと爆ぜる音を広げながら燃え始めた。
枝葉が燃えていた原因を知った僕は呆然と炎を眺めていた。
すると僕の気持ちを知ってか知らずか、赤い毛玉のような生き物はぴょんぴょんと近づくと、僕の肩に飛び乗り頬ずりをする。
「くすぐったいよ。」
僕は右手で赤い毛玉のような生き物を撫で撫でした後、残った枝葉を炎の中に放り投げた。
呼応するかのようにパチパチと音を立てながら勢い良く燃え上がる。
自然に消火すれば、灰と炭が出来るはずだ。炭は今後色々と使い道があり便利だと思う。
枝葉を燃やしている間、僕は気を取り直す事も兼ねて洞窟前の岩に腰掛け、昨日食べ切れなかった洋梨のような果実を手に取り食べ始めた。
すると、燃える枝葉の辺りをぴょんぴょん跳ねて遊んでいた赤い毛玉のような生き物が、ゆらゆらと揺れながら僕の方を見つめだした。
僕はそれに気付くと、洋梨のような果実を欲しがっていると思い、赤い毛玉のような生き物へ向かって差し出した。
しかし、赤い毛玉のような生き物は特に興味を示すことはなく、ゆらゆらと揺れながら、やはり僕を見つめている。
「赤い実じゃないと食べないのかな?」
無邪気な視線に耐えられず、僕は腰を上げると手招きをし、赤い毛玉のような生き物を肩に乗せ、赤い実のなるあの場所へ出発するのであった。
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