プロローグ 4 お似合いの末路
執行を受けた僕は、下の階にあたる刑壇地下室へ真っ逆さまに落ちていった。不思議な事に全く苦しさや痛みを感じる事は無かった。僕の意識は次第に遠のき、これが死と言うものだと実感する。
執行から数分後、視界を遮っていた厚いカーテンは開かれ、刑壇室全体が眼下に晒らされた。そして騒然とする現場。
吊るされているはずの僕の姿は無く、先ほどまで立会室でほくそ笑んでいた松永が悶絶の表情を浮かべ、僕の代わりに首を吊っていたからである。
正直、何が起きたのかは想像すら出来ない。ただ、事実として僕は消え、変わりに松永がそこに存在していたのである。
騒然とする中、執行官の指示により松永は急ぎ刑壇地下室地面へ降ろされた。同時に駆け寄る常勤医師の医官二名。急いで気道を確保し、脈を取り、心肺蘇生を試みるが時すでに遅し。
通常であれば、落下の瞬間ロープが頚部を拘束し延髄損傷、頚骨骨折を起こして終焉を迎えるが、松永にはそのような兆候は全く見られなかった。自重でゆっくりと締め上げられ苦しんだ様は、その表情と必死にもがいたであろう両手両足が物語っていた。
この時何が起きたのかは、後に僕が推測するのだが、今の僕は知る由も無かった。
僕はただ、誘われるがまま深い深い眠りについたのである。
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