これまでのあらすじ[バレ有り]/次回予告
西日本、F県
世界の終わりがまことしやかに騒がれた世紀末は呆気なく過ぎ去って、早十年。
仲のいいクラスメイトたちに囲まれ、何気ない日常を生きる高校二年生の
六月の終わり。授業中ぼんやりと窓の外を眺めていた彼女は、グラウンドの先の電柱で、日本刀を持った制服の少女が自分を見ていることに気がつく。
――INAZAWA MEETS KEMONOSTYLE編――
同じ教室で、人気者の向井弥生にひっそりと憧れながら、まるで対極にいる惨めで情けない自分にコンプレックスを抱く少女、
ここ一ヶ月ほど波夏多市を騒がせている謎の獣出没事件。弥生たちの学校の生徒もその被害に遭っており、授業中に音読された山月記の言葉に、葉月はもしも自分が獣だったらどうしようなどと考える。
しかし事実、その獣の正体は葉月であった。ある夜、葉月はついに獣の状態で意識を取り戻し、これまで自分がしてきてしまったことに苛まれることになる。
私とは何なのか。ずっと抱えていた苦悩が、思いがけない方向へ向かってしまう。私は、獣。普通の高校生にもなれないのに、獣になってしまう。葉月は泣く。
自分ではその力をコントロールできない葉月。ある夜、バイト帰りの弥生と遭遇し、彼女を傷つけてしまいそうになる。
弥生の危機に駆けつけたのは、先日弥生が目にしたあの日本刀の少女であった。彼女の名は
何故か弥生の名前を知っている処凛。処凛は弥生のことを希望だと言った。その言葉が心に引っかかりながら、日常に舞い戻る弥生。
一方憧れの弥生を傷つけそうになってしまった葉月は、学校を休み、独りさらに思い悩むこととなる。処凛との戦闘において、日本刀で抉られた左腕には大きな斬り傷がついていた。両親のいない葉月は、居心地の悪い祖父母の家にもあまり居たくないと、テーピングを巻きつけて翌日からまた登校する。
そうして翌日、欠席していた葉月をなんとなく心配に思っていた弥生は、登校した葉月に声をかける。左手のテーピングのことを尋ねると、葉月は慌ててそれを隠す。その時に見えた右肘のかさぶたは、先の戦闘で弥生が投げつけたコンクリートの破片が直撃した箇所と一致していた。
思い至る弥生、気づかれたと勘づく葉月。葉月は教室から抜け出して、女子トイレで獣になり街へ飛び出す。
弥生は処凛に連絡し、彼女を追いかける。
高校北にある森で、弥生はうずくまる獣を見つける。獣――葉月は弥生に気づくが、抑えきれない破壊衝動が弥生に襲いかかろうとする。
間一髪で再び駆けつけた処凛。二度目の戦いが始まる。
戦闘の最中、弥生は獣に、「葉月ちゃんなんだよね?」と叫ぶ。
誰にも見向きされないと思っていた葉月は、他の誰でもない弥生が自分の名前を呼んでくれたことに、涙する。戦いは中断され、処凛は獣に対して「亡くなった私の両親と、同じく亡くなった弥生の両親の願いのために協力してほしい」と言う。
そして処凛から明かされる「ナンバーガール計画」。かつてこの街にあった宗教団体が、世紀末にやってくる最終戦争を生き延びるために生み出そうとした〝新人類〟のための実験体、それこそが処凛や葉月たちナンバーガールであり、処凛は全てのナンバーガールを集め凍結されたその計画の後始末をつけるために行動していたのだった。そしてその中心、鍵となるのが研究所のリーダーであった向井夫妻の一人娘、弥生であった。
学校に戻り説教を受けた後、葉月は弥生と友達になり、再び束の間の日常へ帰還していく。
次 回 予 告
「南無阿弥陀仏」
念仏唱えて、サヨウナラ。
橋の下、草むらにしゃがみ込んで、溺れる猫を見送る。
鮮血みたいな夕暮れ。風が、鋭く哭いた。
眼鏡の奥で、どろりと濁る瞳。
わたしはぜんぶ、狂わせる。
■
「今日から新しい仲間が、このクラスでみんなと一緒に勉強していくことになりました!」
「田渕処凛といいます。よろしくお願いします」
■
「ナンバーガールが起こしたと思われるような事件がないか、私は父の遺言を受けてからすぐさま探し始めた。そして目星をつけたのはひとつに獣、つまり葉月さんあなたのことで、これは解決した。そしてもうひとつ、大きくその関係性を想起させたのは、
「……発狂事件?」
■
わたしはぜんぶ、狂わせる。
――NAKAO electric brain編――
次回開幕
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