タイムワープ
Nachtmusic
タイムワープ
目が覚めたとき、僕は見知らぬ土地にいることに気づいた。
「おかしいな、夢なのかな」
僕の目の前に広がっているのは、空飛ぶ車だったり天を貫く高層ビルだったり奇怪な服を着た人間だったりした。つまり、未来的な光景が広がっていた。
銀色の服を着た人が歩いてくるのが見えた。
「あの、すみません、今は西暦何年ですか?」
彼は僕に目もくれず、すたすたと歩き去っていった。僕の格好はここの人たちにとっては変かもしれないし、当然の反応なのかもしれない。
いや、あの機械的な対応は人間のものとは思えなかった。今が遥かに未来だとすると、あれはロボット、いわゆるアンドロイドなのだろう。
どうしようか途方に暮れていると、別の方向からまた人間が歩いてくるのが見えた。
「すみません、今って西暦何年ですか?」と僕が聞く前に、「やあやあこれはこれは奇抜なファッションをされた方ですね、お困りですか?」と満面の笑みで僕に問いかけてきた。
「そうなんです、気づいたらここにいて」
「それは大変だ、前の記憶とかは無いですか?」
思い出そうとしたが、頭が痛んで何も浮かばない。でも、だいぶ昔の時代からやってきたことだけは体が覚えていた。
「今は西暦何年ですか?」
「今は2439年ですよ。どうやら重症のようですね、病院に行きましょうか」
この時代の医療なら何でこの場所にいるのかわかるかもしれない。一縷の期待にかけて、彼に従ってみることにした。
空飛ぶ車に乗ってたどり着いたのは、白い大きな建物だった。
「ここで見てもらえば原因がわかるでしょう」
彼は病院の入り口にあるボタンを押した。すぐに入り口が空き、ナースのような格好をした女性が現れた。とてもスタイルがよく笑顔が可愛らしい女性だったので僕は少し緊張した。
「彼をよろしくお願いします」
「わざわざありがとうございました」と僕は彼に感謝した。
「いえいえ、早く治るといいですね」彼はにっこりと笑って去っていった。
僕はナースに連れられて建物の中に進んでいった。記憶がないことや未来過ぎて戸惑っていることなどを話した。
廊下を進んである部屋に入った。そこにベッドがあり、寝てくださいと促された。
僕はおとなしく従って横になったものの、記憶が戻る薬や治療をされるのだろうか、と少し不安になって目をつぶった。
ナースはいつもの処置通りに治療を開始した。しかしすぐに治療は止まることになった。
「なんてことなの、そんなことってあるのかしら」
彼女ははじめての経験に戸惑っていた。
いつも通り、目の前の患者の脳が病に冒されているようだったので、ドリルで穴をあけて調べようとしたのに、出てきたのは大量の血と悲鳴だったからだ。
「彼は人間ってことかしら?でもあんな感情的な人間なんていないはずよ」
機械でできている彼女は彼の亡骸を見ながら呟いた。
「人間がみんな付けているヴァーチャルのコンタクトレンズを彼は付けてないし、でもアンドロイドじゃないし、いったいどういうことなの」
彼の遺体を悲しげに彼女は見つめた。
タイムワープ Nachtmusic @blazikenzapdosferrothorn
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