eight



 そして私は一人となる。

 兵器たちは冷たさを取り戻している。11月。ポッターの見逃した兵器を回収し、すべて使用可能な状態に持ってくるまで5ヶ月を要した。寒風吹きすさぶ北極海、太陽から見放された黒い海で、1200隻の艦艇が歩みを揃え機関を唸らせている。

 核弾頭を迎撃することは難しいことではなかった。実際の所、魔方陣を展開するほどのことでもなかったのだ。イージス艦に搭載されたミサイル迎撃システムは把握しており、少し精度を上げ、発射の手伝いをして、遠くで迎撃するだけで良かった。

 そもそも、書に記された魔法体系に魔方陣などというものは存在しない。ポッターは信じたのか、嘘と知って戦ったのか。どちらでもよい。我々には決戦が必要だった。最後の戦いが全てを終結させてくれることを望んでいた。全てはその舞台装置に過ぎない。装置が働いたのなら、それで十分である。

 あの後、隠された兵器のありかに気付いた元の持ち主が、崩壊した安全保障を取り戻すべく進軍してきた。地上と呼ぶべき地上もない北極へ地上部隊が上陸してきた。跳ね返すのは簡単だった。近づいてくる歩兵隊に戦車隊を動かし、艦砲射撃を浴びせた。攻撃機を発艦させ、爆撃を食らわせた。私は戦略ゲームのように攻防を操作した。攻勢はすぐに止んだ。

 私は今、大西洋を目指している。すでに国連から白旗を揚げた交渉団が来ていた。全面降伏が提示された。国連加盟国一九四ヶ国が私に降伏していた。全ての権利が私にあった。国を潰すことも、国境線を引き直すことも、虐殺を行うことも、共産主義化することも、地球連邦政府を作ることもできた。

 何をするか。実はまだ考えていない。まずは紛争を停止させることが先決だろうか。世界の警察として? それとも国際関係をスクラッチアンドビルドして、何もかもを変えてしまおうか? 分からない。おそらく、私が何かを決めることはないだろう。状況が提示され、私がそれに対応する。決定権は状況の側にあり、私は状況に従属する奴隷となるだろう。状況とは今ここにある兵器たちであり、彼らが全ての権利を持っている。

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