花の告げる思い

水縹

私を忘れないで

「早く死なないかな、誰か殺してくれないかなぁ。通り魔にでも会わないかなぁ」

そう思い続けて、はや何年経ったのやら。

飽きた。通り魔を待ち続けることに。

通り魔に会うのを待つには聊か退屈で仕方ない。

これでは自然に終幕してしまうじゃないか!

そういうわけで、私の下賤な舞台の終幕を考えてみよう。

とはいえ、私はそういう知識には乏しい。

そんな時は、ggrks(ググれカス)と言わんばかりにインターネットの世界に飛び込む。

現代の情報社会は私みたいなポンコツな欠落品にも優しく、色んな終わり方を教えてくれる。

流石の私でも知っている、飛び降り、電車への飛び込み、リストカットを始めとして、燃料アルコール、感電…

挙げたらキリがないくらい、様々な終幕方法があるようだ。

順に、どれがいいかを考えてみよう。

最後の私の舞台くらい、綺麗に終幕したいから、慎重に考えないといけないな。

前提条件としてあるのは、【家族に迷惑をかけない。】

死んで尚迷惑をかけるのは遠慮したいな、ただでさえこんな欠落品を今まで育ててくれたんだ。

育て方は非常に歪なものではあったけれども、な。

あの人が正しい愛情を普通に注いでくれていたらこんなにも腐敗臭をまき散らすラフレシアにならずに1輪の可憐なワスレナグサとして咲けていたかもしれないのになんでねぇどうしてあなたにとっての正しい事を全て私に押し付けてきたの?私の考えなんていらないってことですか、所詮あの人にとって私は都合の良いただの傀儡でしかなかったのですか。傀儡になりきれない私はいらないの?あの人が監督の舞台の1キャストでしかないのかな、使えないから降板させられちゃうの?

閑話休題。

そう考えると電車への飛び込みは無しだな、よくSNSで見るよ。遺族の賠償金額が相当なものであると。流石にねぇ…、ぐちゃぐちゃの肉片になるのは美しくない。

同じ理由で、飛び降りも醜い。

ただでさえ美しくない顔面を更に自ら醜くしたいとは私も思わないさ。

リストカットも悪くはないな、ただし切った部分を水に浸さなければいけないらしいね。そっからの大量出血を待つ、か。

燃料アルコールはヨーグルトと混ぜるといいらしいね。これが中々前向きに検討してもよいのかもしれない。

感電は嫌だな、私自身焦げ臭い香りが苦手なのにその香りに包まれて終わるのはQuality Of Life が下がってしまうじゃないか。パスパス。


そう考えると、燃料アルコールかな。

…あれ?ふと、疑問が生じたんだが、私が消えた後の身体ってどうするんだ?

これ、誰かに処理されるのだろうけども、最終的には家族の元に連絡がいくのではないのかな。

これは終幕できないのではないか。私の前提条件、【家族に迷惑をかけない】終幕が成立しなくなってしまうじゃないか。

嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

何故私自身の終幕すら家族に邪魔されなければいけないんだ。私の舞台をこれ以上邪魔しないで、嫌だよ。私の舞台を終幕するのは私だよ?なんで、どうして























あった、完璧だ。

「私」を殺せばいいんだ。

こうやって家族を愛して愛して病まない、愛されない「私」を消せばいいんだ。

そしてみんなから認められて、愛される『私』を作ればいいんだ。

完璧じゃないか、何故私は思いつかなかったのだろう!

最初からこうしたらよかったんだ。

そうしたら、「私」を消すにふさわしい舞台を考えなければ!

さぁ、

さようならだポンコツ欠陥品の「私」。


はじめまして、あたらしい完璧な『私』。


これにて「私」による下賤な舞台は閉幕、次幕『私』による絢爛豪華な舞台をこうご期待!尚、花束の差し入れは可能であればワスレナグサを入れて頂ければ幸いで御座います。

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花の告げる思い 水縹 @mizuhanada

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