第50話-終わりの見えた後に。


白鳥 八熊が目を覚ますと、見覚えのあるBARのカウンターに座る、見覚えのある男の姿が飛び込んできた。


少し思考を巡らせるが、何度確認しても「今日」は初めてだった。

あの長い1日は、無事終わったようだ。


しかし、そこにいる男は…中村 椿に他ならなかった。

だが、ヒデヨシと呼ばれていた面影は最早失われ、代わりに訳の分からない事を延々と話し続けている。


白鳥 八熊は不信に思いながらも、自身の体にかけられていた毛布に、1枚のメモが挟まれている事に気付いた。

曰く、久屋 錦はしばらく名古屋の地を離れるので、彼を頼んだ との事。

そして…彼はもう、無害である という事だけが書かれていた。



なるほど、無害である事に間違いは無いのだろう。

白鳥 八熊は、何かを延々と話している彼の言葉に、耳を傾けてみることにした。





あぁ、これは久屋 錦が考えそうな事だ。

自然と顔がニヤけてしまう。


虚ろになったままの表情で、中村 椿…かつてヒデヨシと呼ばれた男は、今日もこう呟くのだ。



「名古屋においでよ。」と。

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