-5章-おわりのみえないきみへ。

第47話-尾張の見えない君へ。


中村 椿の手を離した若宮 蘭は、久屋 錦に手を差し出した。



「お借りしていた力は、お返しします。」


米田 豆子も同じように手を伸ばしていた。

これで、全て終わりだ。

長くて短い、短くて長い日々が、終わる。


少しして、久屋の手が離れる。


「ありがとうございました。お元気で。」


そう一礼し、若宮 蘭と米田 豆子はBARを後にした。

帰ったなら、まずは母を弔ってやらなければ。

また、親友に迷惑をかけてしまった。


そんな事を考える若宮 蘭の心中を察したのか、よくできた親友は言う。


「今回の事は終わったけど、私達はこれからも一緒だし、やる事は沢山あるよ。それこそ、一本小説が書けるくらいにね。」




名古屋という街に産まれ、育ち、長い時間を共にした親友は、今必死に「頼れる親友」を演じてくれていた。

尾張という土地を、知っているようで知らない。

何も見えない私の目になり、そして何より…いつだって、親友でいてくれた。


私は、この親友がどんな顔をしているのかも知らない。


だけど、とある尾張の街で、私と共に歩んでくれた 姿の見えない君へ。



「ココ、いつもありがとう。」



普段言葉にするのは気恥ずかしくて、言えなかった気持ちを

なんだか素直に言えた気がした。

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