第46話-罪と罰

BARに戻ると、何気に活躍した神戸 灘が楽しそうに何やら書いていた。

どうやら今回の件をモチーフにした小説を書きたいらしく、オタク特有の気持ち悪い笑い声を響かせていた。


「すまない、若宮さんが怖がるので、静かに書いていてくれないかな。」


「あ、フラリエは大須でそういうの慣れてるので、気にしなくても大丈夫です!」


「え、えっと…キモいならキモいって言えばいいのに…」



虚ろな表情の中村 椿をひとまず座らせ、久屋 錦もカウンターに腰掛ける。


「あの…久屋さん、この人はどうなるんですか?」


「…彼はもう無害だからね。過去の事を考えれば許される事ではないが…私は、君たちの意見を聞きたい。」


そう言って、久屋 錦は2人の少女を見た。


口を開いたのは、若宮 蘭だった。



「私は、もういいです。この人が罰を受けても、何も変わりませんから。」




その言葉に、迷いはないように思えた。

本当に、…強い心を持っている。





…次に口を開いたのは、米田 豆子だった。


「私は、…フラリエを傷付けた人を許せません。でも、フラリエがこう言うなら、何も言いません。」






もしこれが小説なら、なぜこの2人を同性として書いたのだろうか。と久屋は思った。

こんなに信頼しあった2人が、最後に結ばれるハッピーエンド。

そんなお約束的に綺麗な終わり方ができたはずなのに。


しかしそれは別にして久屋 錦も、この男の処遇について考えがあった。




「よし、じゃあ間をとって 彼には簡単な罰を与えよう。これからの人生をかけての事だ。」

「若宮さん、もう一度その力を使って、私の言う通りの心を植え付けてやってくれ。」



若宮 蘭は静かに頷くと、そっと中村 錦の手に触れた。

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