第33話-003の過去
深層心理研究会の研究する異能力を扱えるのは、人間だけなのだそうだ。
そもそも異能力というのは、持ち主の深層心理そのものの具現化である。という説が濃厚であり、何億人かに1人程度の割合で その力を持って生まれるのだそうだ。
我々深層心理研究会は、人工的な深層心理の具現化…つまり、人為的に異能力を発現させるための研究を行っていた。
この研究の暁に、何が起きるかは知らされていない。
しかし、これが非人道的行為であることは明白であった。
若宮トオルは、サンプル003を自らの身体に注射した。
これが成功であったならば、彼はこの施設から逃げ切る事ができるはずだ。
サンプル003の薬液が体内を駆け巡り、そして…
彼は透明人間となった。
…いや、正確には彼だけではない。
彼に触れている全てが、透明になるのだ。
彼は研究データを破壊し、研究室から去った。
追っ手はなかった。当然だ。見えないものを追えるはずがない。
昼も夜も構わず逃げた先は、三重県のとある山中だった。
透明人間。夢のような異能力である事に間違いはない。
しかし、その異能力にも様々な制限があった。
疲れ果てて眠っていた若宮トオルは、二度と目覚める事はなかった。
無残に切り裂かれた遺体だけが、そこに残されていた。
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