異質な話

第26話-白鳥 八熊という存在。


白鳥 八熊は、異質な存在だった。

その異質さ故に、物心ついた時から白い壁の研究室に隔離され、外界との一切の接触を絶たれた。



しかし、彼は知っていた。

12歳になった頃、誰かに施設が襲撃され、周りの人間がいなくなる事を。

彼は知っていた。その日に、自分だけが外に出ることが出来る方法を。





彼はその力を、その原理を、決して他人に証明することは出来なかった。

なぜなら、その力は極めて限定的に、自分だけが体験するのだ。



白鳥 八熊は、ある日夢を見た。

夢を見た内容は、必ず研究員に伝える事になっていたが、その夢だけは、嘘の内容を伝えた。


白鳥 八熊は、何度も何度もその日をやり直した。

結果的に、彼は出られる方法を知っていた という事になった。

しかし、彼がその日をやり直したことの証明は、誰にもできないのだ。



久屋 錦と出会ったのは、施設から脱出して間もなくの事だった。

何も言わずに保護してくれた彼の目は、研究員たちが彼に向けた「観察対象」を見る目ではなく、「同士」を見る目だった。



自分がなぜ、こんな力を持っているのか

なぜ、襲撃者がその事を知っていたのか、わからないことだらけだった。

今だって、まだわからない。


しかし、確実に真実に近付いている事だけはわかる。


久屋が若宮家を守れというなら、それは正しい選択なのだろう。


一通りの思考を終え、心を落ち着かせた白鳥 八熊は

久屋 錦の方へと手を差し出した。

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