第27話-スパイス
異能力 というやつを、君たちは信じるだろうか。
私は信じない。そんなものは小説や漫画やアニメの中でのスパイス的要素である。
信じないが、しかしこれは小説なのだ。
存分に設定を練り、スパイスを散らしたい。
CoCo壱番屋のカレーのように、慣れ親しんだスパイスでもいいのだ。
私…久屋 錦は、異能力者である。
とは言っても、正直使いどころが難しいというか…メインスキルとして持ってくるには、少々パンチの弱い異能力だ。
白鳥 八熊が差し出した手に、私はそっと触れた。
始動条件はこれだけだ。
あとは…展望室から、2人の少女の姿を探す。
2人はよく、愛の広場のベンチに腰掛けて 何かを話していた。
例によって、今日も2人はそこにいた。
私の異能力は、触れた者の異能力の1部を、他人に譲渡する。
しかも、渡す際には「見る」だけでいい。
…ただ、それだけの異能力だ。
若宮 蘭には予知夢を。
そして…隣の少女には、タイムリープを預けた。
予知夢は基本的に、本人か本人の血縁者が死ぬ場合にのみ確実に見られる。
その他の場合にも、生命に支障をきたさない内容の夢を見る事があるが…狙ったタイミングでは見られない。
そして、自分では予知夢の運命には抗えない。
「自分が死ぬ」夢を見たなら、誰かに助けてもらう他ないのだ。
タイムリープは、特定の一人の死を避けられる最後の1日を、無限にやり直せるようになっている。
この場合はもちろん、若宮 蘭である。
若宮 蘭と面識のない私たちが、今突然行っても不信に思うだけだ。
しかし、この方法ならヒデヨシが手を出して来た時…そこで情報を集める事ができる。
若宮 蘭にも、八熊くんと同じように
ヒデヨシが欲しがる何かがあるのだろうか。
それとも…ヒデヨシが恐れる何かがあるのだろうか…。
私は展望室からの夜景を眺めながら、今日も打てる最善策を模索する。
「…いやぁ、それにしても…」
「…終わりが、見えないねぇ…。」
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