第17話-みえないといういみ。
1月23日
ひどい夢を見た。
Siriが読み上げた時刻は、朝の7時。
親友との待ち合わせの時間まで、まだ2時間もある。
これが、ただの夢ならいいのに。
来週、母が死ぬ。
私をたった1人で育ててくれた母が。
いや…育ててくれた恩よりも、私はその後の事を心配していた。最低な人間だ。
母がいなくなれば、私に身寄りはない。
ココにこれ以上の迷惑をかけたくもない。
どうすればいいのかわからない。
…変えられない運命なら、いっそ先に自分が…
そう思っていた矢先、携帯が鳴る。
「おはようココ。すぐいくね。」
そうだ、ココともお別れなんだ。
いつも助けてくれるココに、私は何もしてあげられない。
きっと彼女も、私といるのは疲れるはずだよ。
いつまでも、甘えるのは辞めよう。
…今日でお別れにしよう。
ココとも、この場所とも。
だから、最後は楽しく過ごすんだ。
精一杯甘えて、一人で食べられるトーストだって、口に運んでもらうんだ。
喫茶店モーニングも楽しみ、目当ての買い物も終わった頃、ココと私は電車で伏見駅に向かう事にした。
私は、昔は電車に乗るのが苦手だった。
閉鎖された揺れる空間で、轟音が鳴る。
だけじゃない。
初めて「それ」を見たのは、幼い頃の事だった。
誰かもわからない「人」が、誰かに殺される光景が見えるのだ。
それはいつも、同じ「人」だった。
ある時、母にその「人」の特徴を伝えた事があった。
母は驚いたように、しかしそれを隠すように言った。
「…その人は、…親戚の人よ。」
その声は昔、母に父親の事を聞いた時と同じ声だった。
それから1ヶ月が経った頃、家に警察がやってきた。
母と警察が話している内容を聞いた限りでは、私の父親が三重県の山中で殺されているのが発見されたのだそうだ。
もしかしたら、あの時が最初の予知夢だったのではないだろうか。と、頻繁に予知夢を見る今になってから気付く。
…間もなく伏見駅だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます