3.みえないひとに、みえる日常。

第16話-みえないわたしにみえるもの。


夢は、不思議だ。

目では見えない事を教えてくれる。

私の知らない世界を、教えてくれる。




夢は、恐ろしい。

今の自分が、本当の自分なのかどうか、わからなくなる。

私の知りたくない事を、見せつける。


私は、眠るのが恐ろしい。

でも、目を閉じているだけで「それ」は私を引き込もうとする。









私、若宮 蘭は いわゆる引きこもりであった。

外にいても、家にいても、目には何も映らない。

何もしたくない。


そんな私を「フラリエ」と呼び、外に連れ出してくれたのは、お隣に住んでいる ただ1人の友人だった。


外の世界には、若宮通りにある、ランの舘だった所…

今ではフラリエという美しい場所があるらしい。

不思議だった。

行っても景色を見る事はできないのに、一緒に行きたいとさえ感じた。






ココは、この街の事を何でも知っていた。

どうしてそんなに詳しいのかは…聞いたことも無かったが、1人ではどこにも行けない私にとって、とても頼りになる存在だった。



いつしかココは、仕事を始めた。

いつも一緒だったココは、休日にしか会えない存在になっていた。







ある時から、不思議な夢を見るようになった。

最初の頃は、変な夢だった という程度の印象しか無かったけれど、日に日に鮮明になるその夢が、何かを伝えようとしている。

その事実に気付くのに、時間はかからなかった。



最初の夢は、母の自転車のチェーンが切れる夢だった。

その夢を見た、一週間後に本当にチェーンが切れたそうだが、偶然だろう と、ある種楽観的に捉えていた。

大体、自転車のチェーンがどういうものかも私はよく知らないのに、何をわけのわからない夢を見ているんだ とさえ思った。



次に見た夢は、ココが平日に突然訪ねてくる夢だった。

今までそんな事は一度も無かったし、第一その時間のココは、会社にいるはずだ。

半信半疑でその日を迎えると、夢で見た時間と同じ時刻に、ココは私の携帯を鳴らした。

たまたまにしては、出来すぎている。


その後も夢についての検証を続けたが、「未来を見ている」としか考えられないような結果に落ち着いた。

つまり、私こと若宮 蘭は、予知夢を見る事ができるのだ。



とは言っても、狙った夢を見られる訳では無い。

一方的に与えられる未来の情報があるだけで、どうやってもその未来を回避する事はできないのだ。




その事に気付いた矢先、私は「あの夢」を見た。



1月30日

母は、死ぬ。

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