第15話-みえているものと、みえていないもの
抹茶フォンデュ。
名前からして女子力の高そうなそれは、大通りから少し外れた、知らなければ通り過ぎてしまうような入り口のお店にあった。
気付かなければ、見えていないのと同じ。
そんな言葉が聞こえてくるようだった。
未知の味を、目を瞑って口を開いて待つフラリエの小さな口に、イチゴを放り込む。
果物を抹茶に漬けて食べるとは、なんと斬新な考えだろう。
まさに名古屋らしい…なんて感心していると、次はまだかと急かすフラリエが目に入った。
「次はポテチだよー。」
ゆったりとした時間。
タイムリープに対する絶望感が無いからか、時間がゆっくりと進んでいるように感じられる。
休日とは、本来こうあるべきなのだ。
かけがえのない、つまりは有限な時間を楽しく過ごす事は、2000年にも及ぶ1月23日より何倍も楽しく、そして有意義である。
しかし、だからこそ今日、聞かねばならなかった。
フラリエ…彼女はなぜ、引っ越すことになっているのか。
きっと私は今日、今ここにいるために、1月23日を繰り返したはずなんだ。
ここでまた、やり直しになるかもしれないけど、…私は覚悟を決めた。
「…フラリエ。」
「どうしたの?」
「あの…」
…言いかけた途端、フラリエの携帯が鳴る。
「…あぁ、先に電話出て。大丈夫だから。」
…しかし、フラリエは涙を流すばかりで、電話を取ろうとしない。
私には、その涙の理由がわからない。
見えているのに、一番見たいものが、私には見えない…。
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