第14話-みそのひ
次の日の朝は、意外にも普通にやってきた。
最近のご都合主義の小説のテンプレというやつだろうか。
精神的には二千年以上も仕事もせずに、朝起きては栄に行く日々を過ごしていた私だったが、意外にも体は仕事を覚えていた。
私はとある大手自動車メーカーの関連会社で事務の仕事をしているのだが…それはまた別の機会に話す事もあるかもしれない。
朝八時
煩わしい目覚まし時計の音が鳴り響くはずの時間。
私は既に起きていた。
1月30日
今日は私の庭、大須商店街に行くのだ。
毎月30日といえば、名古屋の民の魂である所の いわゆる「味噌の日」だが、味噌の日が今後本編とは何の関係も持たないという事をここに明言しておく。
フラリエとの待ち合わせ時間は9時だが、ついに我慢のできなくなった私は、彼女に電話をかけた。
「おはよう。ココは大須に行く時は早起きだね。」
「あー、バレバレだね。もう出れる?」
「うん、すぐ行くね。」
そう言って出てきたフラリエは、先週買ったばかりの服を着ていた。
やはり、よく似合っている。
名城線に乗り、上前津を目指す。
…大須商店街よ、待っていなさい…!
地下鉄上前津駅から少し歩いた所に、最初の目的地に辿り着いた。
「生鮮食品館サノヤ」である。
大須商店街に来て、サノヤに迷わず入れるかどうかは、地元民かどうかを見極める大きな判断材料となるのではないだろうか。
だがそんな事は大きな問題ではないのだ。
私の目当ては、サーモンいくら海鮮丼(399円)
この内容でこの価格。
安心のサノヤクオリティである。
サノヤからほど近い公園で、土曜の朝から若い女が2人で海鮮丼を食べる。
しばらくすると、商店街にも活気が溢れてきた。時計の針は10時を回ろうとしていた。
「…さてフラリエ、どこから行く?」
「うーん、せっかくの大須だし、今しか食べられない物を食べたいよね。」
「今しか食べられない物かぁ…、何かあるかなぁ」
商店街各所に置かれていた大須マップを広げてみるが、やはり店が多すぎて目星も付けられない。
…とりあえず唐揚げでも食べに行こうかと思ったその矢先、フラリエが口を開いた。
「クラゲクレープっていうの、食べてみたいな。」
「クラゲクレープ?別にいいけど…」
フラリエが自分からお店を指定してくるのは珍しい…というか、どこで知ったのだろうか。
私も気にはなっていたが、結局2人で行ったことはない店だった。
目当てのクラゲクレープを頬張り、満足そうな笑顔を見せるフラリエ。
食べ終わるや否やこう言った。
「…私は今日は満足だよ。あとは、ココの好きなお店に連れてってね。」
「そうなの? じゃあ、唐揚げ食べようか。すぐ近くなんだ。」
休日にゆっくりと商店街を見て歩くと、色々な発見と、色々な出会いがある。
海外の有名な映画のコスプレの人や、クマの人。
そんな不思議な人々を受け入れる街、大須商店街。
栄エリアとも名駅エリアとも違うこの商店街が、私は大好きだ。
目当ての唐揚げ店は、コンパル本店の隣にあった。
名古屋らしく「味噌ダレ」の唐揚げが楽しめる。
2人で一つの唐揚げを注文し、万松寺通りを大須観音に向かって歩く。
このまま喫茶モカで休んでもいいし、久しぶりに富士浅間神社でお参りするのもいいかもしれない。
「フラリエ、疲れてない?」
「大丈夫だよ。まだ何か食べたいな。」
「そっか。じゃあ…」
大須マップを再度開き、気になっていたお店が近くにある事を確認する。
「もっと、女子っぽい事しようか。」
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