第13話-箱の中の猫

フラリエは、私と出かける時以外はいつも家にいる。

子供の頃から、人が苦手で いつも私の後ろを着いてきていた。

同居している母親は、いつも仕事で家を空けていて、父親はいないらしい。






フラリエは、家にいる時間はずっと音楽を聴いているらしく、インターホンには気付かない。

家の前に着いた私は、フラリエの携帯を鳴らした。



「ココ、どうしたの?」


「あー、カレーパンと天むす買ってきたよ。食べない?」


「食べる。待っててね。」



少しすると、玄関のドアが開いた。


「入ったら、鍵かってね。」


「うん。お邪魔します。」


何度も入ったはずのフラリエの部屋も、やはり懐かしい。

カレーパンを手渡すと、フラリエはすぐに大口を開けて頬張った。


「…ご飯食べてなかったの?」


「ううん、味噌煮込み食べたよ!寿がきやの!」


「…そう。」


「あ、そういえば冷蔵庫に飲み物あるから、自由に飲んでね。」


「ありがと。」



冷蔵庫の飲み物は、お茶とトマトジュースとカルピス。

…せっかくだから私は、この赤い方を選ぶよ。なんて心の中で呟きながら、お茶とトマトジュースを手に部屋に戻った。




引っ越しの話には触れなかった。

来週の大須での行きたいお店や、食べたい物などについて話していると、すぐに時間が過ぎていった。










「…ごめん、明日仕事だし、そろそろ帰るよ。」


「うんうん。じゃあまた来週だね。またね。」



フラリエも、私と離れるのは寂しいと感じてくれるのだろうか…。そんな事を考えながら、フラリエの家を出て自分の部屋に戻る。




明日から仕事。

何でもない日常に戻る。

私にとってはむしろ、日常こそが非日常になってしまうのかもしれないが…。



そんな折、今日の終わりにこんな事を考える。

…今、眠ってしまっても

また「やり直し」にはならないだろうか…?


そういえば、さっきフラリエが聴いていた曲にもあったな。

「眠るのが恐ろしい」

「開けてみないとわからない」


まぁでも、考えたってキリがない。

昨日のループの抜け方はわかったんだもの。

果報は寝て待て とも言うわけだし、とりあえず眠ってみるとするか…。

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