第6話-よくあるにちじょう

土曜日のオアシス21は賑わっていた。

何度来ても、不思議な空間である。

屋上デッキの「水の宇宙船」は、夏は涼しい…かと思いきや、やはり日当たりが良いので暑く、冬は漏れなく寒い。


オアシス21から地上に出て、新栄の方に歩く。

土曜日のビジネス街も、やはり忙しそうに歩くスーツ姿の面々が目立つ。

フラリエがビジネスマンたちにぶつからないように注意しながら少々歩いた先に、お気に入りのローストビーフ丼のお店が見えてきた。

少し並んでいるが、すぐに入れそうだ。


名古屋を題材にした小説だからと言って、味噌カツやらを食べると思ったら大間違いなのである。

だってそんなに普段から名古屋メシばっかり食べるわけじゃないし、むしろ観光客が食べるもののようなイメージがある名古屋メシすらある。


「六人並んでるけど、ここでいい?」


「うん。何がオススメ?」


「ローストビーフ重かな。」


「じゃあ、私それにするね。」



私は過去に過ごした「今日」に、何度もローストビーフ重を食べたが、「今日」のフラリエはローストビーフ重を食べるのは初めてだ。

私の予想通り、少し並んだだけで店内に通された。



注文を通してから少し待つと、お目当てのローストビーフ重が提供された。

白いご飯の上に幾重にも乗せられたローストビーフに、ユッケ風のタレがかかっている。

二千年を超える「今日」を経て得た、お気に入りグルメの一つだ。


「美味しい?」

フラリエの口にローストビーフを入れながらそう聞くと、静かに頷く。


「それなら良かったよ。」


「スプーンだから、後は食べれるよ。」


「ん、じゃあどうぞ。」



そう言ってスプーンを手渡し、私も自分の食事を始める。

初めての「今日」を迎えた時も、こんな当たり前の時間がいつまでも続くんだと思っていた。

いや、まぁ現実にいつまでも続いてはいるんだけど、こういう続き方を望んでいたわけではない。


…なんてややこしい事は、タレの絡んだ旨い肉を頬張りながら考えるような事でもないな

と、問題を意識の外に追いやる。


「…今日も、美味しいねぇ。」

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