グラウスの伝説

1

 ノーラ・スタンスにとっては別に窮地というわけではないが、その心構えを万人に要求するのは無茶というものだろう。少なくとも、私の隣で、同じように身ぐるみ剥がされてうずくまっている少女にはちょっと要求できない。


「泣かない、泣かない。誇らしくいようよ」

「博打で有り金全部取られた人は黙っててください!」


 ゲシゲシ。蹴りをいれられてしまった。私の美しさはそんなことでは翳らないが、同じように有り金を失った奴に言われるのは納得がいかない。


「そもそも、なんで装備も衣服も失ってそんな堂々としていられるんですか、あなたは!

 ――ああ、そうでした、そうでした。ノーラは自分が見られるのが大好きなんですよね。だったらこの檻の中で踊ったらいいじゃないですか! 目立ちますよ! どうぞ!」

「自慢の顔を見られるのが一番だよ。そこだけ間違えないで」


 段々と語気を強めていくあたり、現状への文句は相当のものだ。

 ヴァーナ・レブは夫から――銀河で最も危険な男から逃げている身だ。私にその手伝いを頼んではいるが、逃げようと思ったのは彼女の意志だ。図太い。それを思えば、ひん剥かれて檻に閉じ込められて見世物にされている状況など、取るに足らないはずなんだけど……。まっ、これもまた無茶か。


「なぁ、そこの子豚君。勝負はどうなっている? また店の一人勝ちかい?」空中からぶら下げられた檻のすぐそばで椅子に座り、向こうの騒ぎを眺めている黄色いブタが直立したような男に尋ねた。

「あぁん?」不機嫌そうに子豚君は私の方を向く。美意識が違うためだろう、私の美しさに目をやられるということはないらしかった。「新しい勝負が始まったばかりだ。そこでじっとしてろ」

「ということは、カモが来たということか。檻の中の愉快な仲間が増えないことを祈っておこう」

「増えますよ。この店全員がグルなんですから」責めるようにヴァーナが言った。


 ここ――蛇行航行団スネイダーは、言うなれば宇宙を巡る街だ。この形式は一つ一つの店が出資しあい、群れを成して更なる利益を求めて飛び立ったのが始まりと言われる。大抵は商店街になるが、スネイダーは歓楽街としての面が大きい。私が入ったこの店、タルン・トウンは派手さが売りのカジノだ。広々とした敷地に店は三つに分かれており、行き来は贅沢にも水上。船でのサービスもパーティーをやるには充分すぎるほど。店内に入ってしまえば、そこは王侯貴族の星間結婚かと思うほどの装飾過多。客は否応なくこれからの夢に胸を膨らませ、財布は意味をなくす。


 しかし、その派手さには秘密がある。


 ヴァーナの言った通り、この店は客が二割、従業員が八割だ。更に言えば、従業員のうち七割は客のフリをしている。志を同じにする仲間にしてライバル、いずれは敵と思ったらそこで勝負あり。最初からみんな敵だったというオチに一直線。ここまで来るといっそ清々しいまでのぼったくり姿勢だ。勝ちも負けもコントロールして、店の純利益を優先している。なんとなく入った奴、わざわざ招待された奴は徹底的に搾り取られてしまう。素晴らしいまでの仕事魂と言えよう。無事で済むのは認められた常連、VIPだけだ。彼らもまた店の仲間も同然である。


 私とヴァーナは、ある情報を得るためにタルン・トウンに入った。我が自慢の宇宙船サラにある中でも、このような派手な舞台によく似合うワインレッドのドレスを持って、気合を入れて店内に美の化身を降臨させた。あの瞬間の気持ちいいこと。ヴァーナからは大して注目されてないですよと言われたけど、彼女はきっと見逃したのだろう。うん。


 そして、私は礼儀としても、また、手段としてもギャンブルに身を投じた。最初こそ気持ちよく勝たせてもらい、そろそろ情報収集に入ろうかと思った次の瞬間、一気に負けた。そこからはズルズル。あっという間に私もヴァーナも服まで取られた。正直、悔しさ以上に感動と尊敬があった。私がギャンブルへの集中力を一瞬とはいえ解いた瞬間を逃さずに狙い撃ちしてきたタルン・トウンの技には恐れ入る。ああ、いいもの見れたなぁ! という気分だ。熟練の技という味わいもまた、受けてしまえば我が財産。これはもう、フォルダーとしては勝ったも同然なので、私は檻の中でも気分がいい。フフン。


「だけど、お仲間が来るのを寝そべって待つのも芸がないよね」

「脱出の手立てでも?」


 勿論、ある。

 ここはあくまでカジノだから、内臓引っぺがしたり異空間を調べたりもしない。身ぐるみ剥いで金目の物を物色するだけだ。そこがいいんだ。目につくお金以外には用がない。ハードだ。かっこいい。

 だけど、こっちは冒険を生業とするフォルダーだ。

 こういうところに来る時は、身体のあちこちに仕込みはしておくものだよ。


「まだもう少し待つとしようか。あっちが盛り上がるまで」私はニヤニヤを抑えるつもりもなく、いっそ吊るされた檻から店内を見下して現状を楽しむことにした。


 それも飽きがきて、腰を上げようとしたその時だった。


 突然、快楽と計略に埋まる色合いを見せ続けていた店の空気が一変し、どこか凄烈な刃物を突き付けられたかのような鋭い痛みを含んだ。一種の清涼感が感じられるほどに、真っ直ぐ切り込んできている。ピリッとした空気は、混沌の中心から広がっていた。

 何かが違う――私は慌てて身を乗り出し、檻から向こう、個人の未来を決めるための場に視線を飛ばした。



 そこに、魔女がいた。


 黒衣に身を包み、羽根を畳んだ濡れ鴉のような髪を垂らしている。その瞳は優雅な自信に彩られ、触れえた者を断つ刃だった。黒衣から伸びる腕は風に揺れる枝のように細く、病的なまでに白く。しかし、血よりも熱く、赤い爪は暴力的な魅力に溢れていた。

 剃刀で裂かれなければそうはならないほどに調和しており、凄烈な美をたたえる唇が上がり、


「次も、私の全てを賭けるわ。奪ってごらんなさい」


 タルン・トウンに堂々とした喧嘩を売った。

 間違いなく、美人と認定してよい、いや、そうでなければ失礼にさえあたる彼女の挑発に、ディーラーは最大限の礼儀を尽くした。その結果、今日でタルン・トウンが死を迎えるとしても。

 魔女の笑みは止まらない。

 傍らに、少年が一人いた。小太りで利発そうな子だ。弟か、あるいは息子か。夫の可能性も否定できないし、父かもしれない。


 トリーズが始まった。

 テーブルより少し高い所に座す、ゴツゴツとした岩の身体を持つ四足の動物が手の平サイズのカードを吐き出す。改造の成果だ。彼の背中から入り、口を通るカードはその過程で洗浄され、微細なチップさえも逃さず破壊してしまい、五百ある図の内の一つが新たにインプットされ、新品同然で客のもとに配られる。イカサマ防止のためだ。ゲーム開始前に内部が公開されるので、店側のイカサマもまたないとされている。実際はどうか分からないが。


 トリーズは役を揃える典型的なカードゲームだ。1ゲームは急ぎで朝食を食べる程度の時間で終わる。これが繰り返されていき、数十セットして五百のカードが出揃うとその時点でショーダウンとなる。ここで、ゲームはまた別の顔を見せる。それまでに揃えた役は絵と共に架空国家の歴史を現しており、その歴史自体が役となる。

 魔女は、豪運か豪腕か、最も理想的な役を揃えつづけていた。カードを公開するたびに浮かぶ微笑は蜘蛛の巣か何かなのか、狂信者と化した店のあらゆるを惹きつける。


「ショーダウンよ。詠み手を出しなさい」


 漂う二メートル前後のクラゲがふらふらとやってきて、役を詠み上げた。歴史を、その戦いを、終焉を。

 詠み上げと共に役は成立していき、最終的な結果に影響を及ぼす。しかし、今回のゲームにおいては全くの無意味と言えよう。一国の大勝に終わったのだから。


「まずいな。あれはやばいよ」焦りを隠しきれずに私は言った。

「ここが、負けると?」

「何考えてるか分からないけど、ここのスタッフよりあの魔女の方がずっと優秀だ。狙いはちくしょう。こっちと同じかもね。そうでなければ単身、あんなケンカの売り方はしない。ヴァーナ、脱出しよう。ちょっとこっち来て」

「なんです?」


 素直に近づいてきたヴァーナに対し、私はその瞳をペロリと舐めた。彼女の身が咄嗟に引ける。


「なんです!?」

「準備。さっ、行くよ」


 私は器用に内臓を動かし、用意しておいた機能を呼び出した。液体がググッと喉を駆け上るのが分かる。やがて、それは口腔内に到達した。両頬を水風船みたいに膨らませ、溜まった液体を柵に飛ばすと、瞬く間に世界が白く染まる。

 胃に待機させておいたカプセルから飛び出したのはほんの数グラムで都市一つに落雷を錯覚させる違法薬品だ。元々はどこぞの星系で戦時中に作られた場当たり的な開発だったのだが、流れに流れて私が10kgほど購入した。

 一瞬の激光が店内を包むが、私とヴァーナは視界を確保できている。彼女は驚きも一瞬、全てを理解したらしい。

 先程彼女の瞳を舐めたのは、舌に仕込んでおいた専用遮光液を塗りつけるためだった。この違法薬品による光を綺麗さっぱりシャットアウトしてくれる。

 反応を起こす羽目になった柵には高熱が発生し、本来の機能を失い泡と消えていった。夢か現か、光の中での進行など周囲には分からないし、私にはその純白たる景色は拝めない。


 ここからは急ぎだ。私もヴァーナも互いを確認しないで走った。そこらの物を掴んではドアに向かって投げつけて解放していき、そのたびに発光薬品を吐き出していく。品切れになるころには、この店は光の中だ。

 異変に気付いた連中の初動は光で押さえきれるが、すぐに対処はされるだろう。何より、この光には生物に対して殺傷能力どころか思考力を強制的に低下させる力もないし、損傷も発生しない。あくまで鎮圧と、混乱による同士討ち狙いで作られた代物だ。立ち直られる前にこっちはやることを済ませなければならない。

 剥ぎ取られてひとまとめにされていた私たちの衣服、荷物を回収し、店の景品室――という名の餌兼宝物庫へと走った。中に誰もいないのを確認すると、すぐさま出入り口を封鎖する。


 目当てはここだった。ギャンブルで勝ち抜けば招待される部屋なのだが、結果は案の定。ここはあくまで夢を見させる広告塔に過ぎない。

 ところが、あるんだよね。

 こういうところにこそ、求めるものが。


 多数の台座。都市一つ吹き飛ぶ爆発にも耐え抜く超硬質ガラスケース。そのうちの一つに黄色いカエルの頭部に四肢を生やしたようなお方が収まっていた。大きく黒々とした目でこっちを見ている。

 ここでは私たちこそが珍しいものなのだろう。喉を唸らせている。


「やぁ……お客さんだけとは珍しいね。騒ぎを起こしたらしい君たちは誰だい?」カエルが聞いた。

「私はノーラ・スタンス。フォルダーをやっている」

「フォルダー……?」


 知らない、か。知名度低いのかなぁ。


「要は行動力のある物好きです。ミスター・サンガー」ヴァーナが補足した。

「ほう……私をよくご存知」

「大物らしいゆったりした話し方は今は遠慮願いたいな。サンガー、君が隠し持っている書物を渡していただけないだろうか? 君には自由を与えようじゃないか」


 もう少しすればここに大勢雪崩れ込むだろうから、手っ取り早くが望ましい。

 サンガーにもそれが伝わったのか、老いた筋肉が心なしか若々しさを取り戻そうとしていた。


「いや、自由はいいよ。ここは居心地がよくてね……それより、何が欲しいんだい?」

「くれるのかい?」

「物による」

「ノマドの書だ」揺さぶりも何もなく、私は言った。


 目を剥いたサンガー氏は、その拍子に咳き込んだ。薄汚れた赤黒い舌が見え隠れする。


「よこしてくれるかな?」

「君は、信じているのか? 惑星グラウスの伝説を」

「信じる信じないではない。興味があるから行く。そして得るんだ。君にもこういう感覚は分かるんじゃないかな? かつて宇宙を泳ぎ回り、数多の名声を得た大泥棒たる君には」


 褒めるのは常套手段だろう。この黄カエルにもそれは通じる。


 シーワーズ・サンガーがここに飾られるようになったのは二百年ほど前。それまで、彼は超小型宇宙船で星から星へ盗みを働き続ける広域指名手配犯だった。盗むものの幅は広く、彼が盗んだ結果として証拠が闇に葬られ万々歳、というものさえある。やり方は慎重だが緩やか。盗みの途中で見つかることの方が多いが、彼はその全てをのらりくらりと躱し続けた。

 ところが、ここに入ったのがいけなかった。盗みがバレたところまではよかったが、店の金庫にまで手を付けようとしたがためにタルン・トウンの逆鱗に触れ、その年のベストチェイスにノミネートされるほどのレースの果てにあえなく捕まり、ここに入った。それからが面倒で、彼の処遇を巡ってタルン・トウンはその名を広く響かせた。何せ、泳ぐ国家機密みたいなものなのだ。ここでもタルン・トウンは金の匂いを一つ残らず嗅ぎ取り、彼をケースに詰め込んで見世物にした挙句、彼に関わりたがる国家相手に嫌々ながらも交渉していった。今でもそれは続いている。


 彼が持つ機密の一つが、ノマドの書と呼ばれる個人の手記だ。

 これが危ない。臭い。そして、魅力的。これのせいで著者ヴィッターニアノ・アンク・ノマドはとある星から経歴が抹消されたうえ、現在でも記憶複製などの疑いの下で抹殺令が解除されていないほどである。

 そこに記されているものは各々によって意味合いが異なってくる。

 私にとっては、芳醇で、刺激的で、恐怖と蛮勇をくすぐられる大冒険の香りだ。


「……持っていってもいいよ。どうせ私には無用の長物だ。しかし、グラウスの伝説に挑むのはおすすめできない――」互いの視線が矢のようにかわされ、伝えるべきたった一つが確かに刻まれたのを私は見た。「――君は、そうか、フォルダーとはそういう連中か。愚かしくも頼もしい。昔気質の冒険者に似ているが、節操のなさは上と見たね。得るのは冒険だけでいいか」

「そういうことだ。さぁ、早く」

「このカジノに喧嘩を売った度胸への、報酬としよう」


 彼の腹が沸騰の動きを見せ、すぐに口からべとべとの書物が吐き出された。どうやってしまっていたのやら。薄緑のノートだ。

 ビームカッターでケース上部を切り取り、ノマドの書を受け取る。年季を感じさせる代物だ。確かに、これが、冒険へのガイドとなる。


「さぁ、脱出ですね。急ぎましょう」

「ああ」ヴァーナの言う事に従い、私は踵を返し――


 突如、全てが漆黒に包まれた。

 明かりが消えたと思った。

 違う。

 上塗りされている。

 黒く、深く、広く。

 光を食らいつくして闇が私たちを呑んだのだ。


 闇の中に一瞬の光線が走った。

 焦げるような音がした。

 キリリと締まるのは首、そこから肩、腰、膝――全身が細い何かに留められている。

 身を縛る光を頼りにヴァーナの方を向くと、そこには身体を反らし扇情的なポーズで静止している少女がいた。全身の至る所に光線が伸びている。

 銀光だった。

 ピンと張られたそれは何かが伝って流れている。目に見えるほどに凝縮されている。


 糸のようだが、少し違う。全力で回転させた頭には、ヒットする項目があった。これは情報の束だ。伸びた先、触れたものを区別なく縛りつけるという情報を持っている。

 確か――光糸、と言ったか。

 工事などには使われるが、少なくとも、こうやって武器に使うには適していないはずだ。

 十本、二十本程度なら。


「失礼。それ、渡してくださる?」


 闇に一層濃い闇が紛れた。

 恐ろしいことに、数百本の糸を操っているのはたった一人の魔女だったらしい。檻の中から見た時よりも印象は黒い。

 銀光に燃え上がるように浮かんだ冷徹な彼女をふわりとこちらに近づけるのもまた、光糸だろう。深い闇の果てから私の魂を迎えに来たかのような妖しさを引きつれて、魔女が見上げられる位置に立った。


「渡してもいいが、こちらが読み終わり、複製を完了してからにしていただきたいね」とりあえずと口が早く出る。魔女は笑っていた。

「だめね。今よ、今欲しいの」


 遠慮なしに手を伸ばして来た彼女に、私は敵意を抱こうかと迷った。ヴァーナに目をやれば、あちらは準備完了。こちら次第というわけだ。

 冒険の道標に魔女の手が届くその瞬間、私は身体の内側を巧みに動かしてベルトに働きかけた。すぐさまベルトは私が望む機能を発揮する。

 チョーカーが爆ぜるようにヘルメットを展開し、私の頭部を包んだ。一瞬のことだ。しかし、魔女は驚いたらしい。私はその隙を逃さず、ボディガード・フィールドを限界まで振り絞って発動させた。溶けるように情報の糸が消え去っていく。これで当分、フィールド・バリアはなしだ。


 溶ける瞬間の糸をバネに後ろへ飛び去った魔女を追い、私の身体は最短距離を弾丸の威力を誇って飛んだ。既に闇はないに等しい。ヘルメットにはこの部屋がそのままに見える。すぐさまサーベルを精製しながら抜き、彼女に向かって空へ昇る流れ星を描く……はずだった。星は空へは昇れなかった。今度は何本だろう。光糸がサーベルを受け止めていた。千切れに千切れていくが、そのたびに新しい光線が張り巡らされる。ヘルメットのシールド部分に表示された分析結果は驚くものだった。えらくハイスペックな情報の糸だ。一本ずつ、入力されている情報一文字ずつ、解読に数年かかってもおかしくない暗号が細かく刻まれている。咄嗟の情報解除はまず不可能だろう。力で叩き斬らねばならない。しかし、現にこうやって、物量で守られている。どんな精製スピードだよ。


「同業者だったら、分かるはずだ。奪うならそれなりの方法。同業者ではないのなら、忠告しておこう。やめたまえ」


 わざとらしく本を掲げながら言ってみせた。

 後ろで、糸の消滅が起きた。

 腕のビームブレードを発動したヴァーナが全てを断ち切り、じわりと距離を詰めてきているのだ。

 剣戟と糸による防御が止み、互いに距離をとる。

 明かりがこぼれた。

 扉の向こうに、あの小太りの少年がいた。


「リズ! 戻ろう!」


 魔女に向かって言ったのだろう。

 リズは一瞬肩をすくめると、情報の糸を全て回収し、軽やかなステップで少年を抱えながらタルン・トウンを脱出した。


「ノーラ、ノマドの書はどうですか?」走りながらヴァーナが聞いた。

「無事だよ。早いとこ脱出しよう」


 身体に残る糸のあとに恍惚と怒りと、興味を感じながら、私たちはそのまま景品室の壁を破壊して脱出を敢行した。

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レッドフォルダー 伊達隼雄 @hayao_ito

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