第10話 ─親─
「我が皇子、なにか悩んでる?」
「え?…ううん」
「───そう」
「なにかあったら、言ってください」
「え──うん。突然なに?」
「ほら、問題終わったの?」
「え、あ、…まだ…」
「じゃ早く解きなよ。課題増やすよ?」
「晴明様が、華の出した課題が終わらなけれ
ば、獄界研修を兼ねて獄界でのキャンプ
10日間だそうです」
「えー」
「えーじゃないの。ほら早く」
「はーい」
破の報告を聞いて表情がごそっと抜け落ちた后に、笑顔が隠せない保護者2人。
「なにしてんだ?2人して笑って。
─────俺なんか変な事言った?」
「ううん、なにもないよ」
「───そっか」
「はい」
「ほら早く、晴明様帰ってきちゃうよ?」
「うーうーうー」
「華も帰ってきてほしくないんですね。
私もですよ」
「ちょっ…別にそういう意味で言ったわけじ
ゃないから!ああああ我が皇子、
え、違うの?みたいな顔やめて!」
「え?違うの?」
「帰ってきてしまう、と言ったので、帰って
きてほしくないのかと…」
「えっと、そう、言葉の綾ってやつだよ!
だいたい破、もってなんなの!」
「そのままの意味ですよ。
…では、そういう事にしておきましょう」
「そういう事じゃなくて、そうなの!」
「はい、わかっています」
「───────(絶対わかってない)」
「ちゃんとわかっていますよ?」
「ああ、うん…」
破は生温くも感じる笑顔でわかっていると言うし(というかまた思ってる事読んだこいつ)、
我が皇子はくすくす笑ってるし。
「─────何笑ってるのさ」
「…いや、夫婦喧嘩みたいだなーって」
「なっ…」
(あ、めっちゃ顔赤くなってるー)
「我が皇子、私と華は子供の頃から一緒にい
る幼なじみではありますが、夫婦とまでは
いきませんよ」
「えーじゃあ彼氏と彼女ぐらい?」
「そうですね、それぐらいでしょうか」
「ちょっと待って、そこまでも行ってないか
ら!ていうか我が皇子は天然だろうけど、
破は確信犯でしょ!」
「え…華は破とただの親友程度のつもり
だったのかー?知らなかったなー」
「……甘雨」
突然出てきて茶々を入れる甘雨には溜息だ。
「后のは…まぁ、天然…だな。うん。
それと后、2人がカレカノ♡なら、
俺らもカレカノ♡になるぞー?」
俺らも生まれた時から一緒なんだしなー、と
影で華のフォローをしつつ告げる。
「……あ、そっか。じゃあ違うなー」
「我が皇子のそれ天然なの?確信犯なの?」
「何がー?」
確信犯だなこいつ。そういえばオモテのトップで、闇世界の次期トップだったなこいつ。
…とは、華は言わない。
后には、今まで通り天然無垢の"守るべき人"でいてほしいのだ。
実際天然な部分もある(どこからどこまでが無意識の天然なんだかわからない)みたいだし。
「……我が皇子はそのままでいてよね」
「─突然なに?どうしたの?」
「ううん、なんでもない。
ほら早く勉強しないと獄界だよ」
「───そっか。
うげ、がんばる」
✄----------------- キ リ ト リ -----------------✄
突然の華后。
桜の下、月に愛されし。 紫姫 @sikimiki212
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