砂漠の熱帯魚

「任せてください。きっと満足のいく結果を出して見せます」

 椎尾は砂漠の開発技術の担当になり、水を得た魚のようにやる気を出した。


 準備期間を経てQ国のZ砂漠に旅立った椎尾は、仲間たちと砂漠の緑化計画等に従事したが、己のミスで一人広大な砂漠に取り残されてしまった。

 椎尾は自分には体力があり、暑さにも強いと思っていた。どんなに暑く、炎天下の下で働いていても熱中症などには無縁だった。

 だから、つらい砂漠の仕事をこなせるのは自分しかいないと自信を持っていた。

 ゆえに、砂漠に取り残された時、どうにかなると最初は考えた。歩いてここを脱出できると簡単に思っていた。しかし、砂漠の殺人的な暑さは強靭な椎尾の体から水分を奪っていった。

 歩けど、歩けど、砂、砂、砂。

 見渡しても、見渡しても、砂、砂、砂。

 やがて汗を一滴もかかなくなり、口の中はねばねばからからからに変わった。唇がひび割れ、体の潤いが表面だけでなく中からも失われていくのがわかった。

 熱い砂の上に倒れ込んだ椎尾は水槽から飛び出してしまった熱帯魚のようにぱくぱくと口を動かしていたが、やがて止まった。

 白く照り付ける灼熱の太陽だけが彼を見ていた。

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