犯罪者

 真夜中、道に美女が落ちていた。

 いや、正確には道の真ん中で美女が死んでいるというべきか。

 何があったのかわからない。

 殺されて捨てられたのか? 

 だとしたら、発見されにくい場所に捨てるだろう。

 道を歩いていて急に具合が悪くなったのか?

 それなら、バッグがあるはずだ。見たところ周囲には何もない。

 それとも、すでに誰かにパクられたあとなのか。

 死因はいったい何なのか。血が流れてないから刺されたのではないのだろう。

 とてもきれいな死に顔をしている。首を絞められたとか、毒を飲まされたとかそんな死因でもないのだろう。

 それにしても美人だな――

 あっ、はやく警察に通報しなくては。

 でも、もう少し眺めていたい――

 こんなきれいな人はいったいどんな下着を身につけてるんだろう。やっぱりたくさんレースを使った高級品なのだろうか――

 あっ、いやいや、何を妄想してるんだ。はやく、電話しないと。

 その下着の下はどんななのだろう。きっと肌も白くてきれいなんだろうな――

 ああだめだ。妄想が止まらない。

 こうなったら少しだけ見せてもらおう。そのほうがすっきりとした気持ちで通報できる。

 ブラウスのボタンを外す。一つ、二つ――

 後ろでけたたましい悲鳴が聞こえた。

 振り向くと、女性二人組がおびえた目でこちらを見ている。一人が慌ただしくスマホを操作していた。


 十数分後、僕はパトカーの中にいた。

 何を言っても信用してもらえそうにない――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る